職人の高齢化・引退の波を乗り越えろ!ヤスリ製造の現場改革/有限会社柄沢ヤスリ【Change Leader vol.21】

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※この記事は新潟県中小企業団体中央会・ものづくり支援センターさまとのタイアップ記事です。

「前向きに自らを変化」させることで、新たな価値を生み出す「Change Leader」をピックアップ。

第21回は、職人の高齢化が業界全体に暗い影を落とす中、その技術を受け継ぐべく一部機械化に踏み切った柄沢ヤスリ。職人の引退や廃業で生産そのものができなくなる危機を乗り越え、ヤスリ技術の命を繋ぎ止めました。

職人の技を自動化・機械化する

国産ヤスリは広島県呉市が製造シェア95%を独占。そんな業界で柄沢ヤスリは、特に極細、薄平、プラスチック用といった特殊な工業ヤスリの製造をしています。

ヤスリは平・甲丸・丸・角・三角など複雑な形状が多いため、製造現場では職人に依存し自動化が進んでいません。しかし、近年は職人の高齢化・引退により技術継承が死活問題に。この難局を乗り切るため、H24年度からものづくり補助金を活用。90歳を超える職人が一人で担ってきた爪ヤスリの目立てを自動化する「自動爪ヤスリ目立て機」を導入しました。また、外注先の職人の高齢化により生産量が限られていたダイヤモンド砥粒を電着させて刃とする「ダイヤモンドヤスリ」の土台となる台金(ダイヤモンドベース)の製造を内製化するため「全自動研削機」の開発に踏み切りました。

さらに、高齢となった外注先の廃業を受け、H27年度にはヤスリの「目立て」の前工程にあたる、表面を研磨して整える「削り」と「双手(もろて)ヤスリ掛け」の内製化と自動化・機械化にチャレンジしました。結果、職人に依存していた工程を経験の少ない社員にも任せられるようになり、生産効率が向上。今後は、職人不足が深刻なこの業界の助けになればと、開発した技術を普及することも検討しています。

爪ヤスリの目立てを自動化。展示会をきっかけに大量受注

爪ヤスリの「目立て」は、社内で90歳超のベテラン職人一人で対応していましたが、需要が増加し生産が追いつかなくなっていました。そこで、職人の作業を自動で行える爪ヤスリ目立て機を導入し、生産量が5倍に。これを機に高級爪ヤスリの開発などで商品ラインナップを充実。「東京インターナショナル・ギフト・ショー」への出展や、人気通販雑誌の紹介などで、注文が殺到する看板商品となりました。

ダイヤモンドベースのシェア独占。専任の社員も増員

外注先の職人に頼っていたダイヤモンドヤスリの土台「ダイヤモンドベース」の製造を、自動研削機の導入により内製化。これまで全国シェアを二分していた呉市の同業者が製造を中止したこともあり、柄沢ヤスリに注文が殺到。機械の調整と人材育成に時間はかかったものの、自動化により生産量は3倍となり、国内の製造シェアはほぼ独占状態となりました。

外注先の廃業を受け、「削り」と「双手ヤスリ掛け」を内製

ヤスリは「目立て」しやすいよう、「焼きなまし」で素材を軟らかくします。その際に高熱で「酸化スケール」と「脱炭層」がヤスリの表面を覆います。この被膜を取り除くのが「削り」。さらに削りの摩擦熱で硬化した層を「双手ヤスリ掛け」で取り除きます。一人の職人に頼っていた2つの工程を、自動化・機械化したことで、女性や経験の少ない作業員でも実施可能になりました。

柄沢ヤスリにしかない技術や日本のヤスリの伝統を存続させたい

代表取締役 柄沢 良子さん

リーマンショックの余波を引きずる2010年、父が他界したことをきっかけに長年続けた高校教師から社長業へ転身。ヤスリのことはほとんど何も分からないなか、職人の高齢化による業界の将来への不安を感じていました。何か手を打たなければと臨んだ燕市の補助金事業の選考会で、前職を質問され教師だったと伝えると、「だから、おしゃべりが得意なのか」と全員が一斉に笑顔に。この経験を経て、「自分にはヤスリの技術を存続させる使命がある」と一念発起。以来、業界の問題をどう解決できるかを考えて行動するようになりました。

切れ味抜群の爪ヤスリ『シャイニー(爪)』

人間工学に基づいた安心・安全の構造だから、お子さまや体の不自由な方でも安心してお使いいただけます。爪の曲線に合わせたカーブは日本初の技術。どなたでも使いやすい爪ヤスリです。

会社概要

工業用ヤスリの総合メーカーとして昭和14年に創業。江戸時代から続く伝統的な手法を受け継ぐ職人がヤスリ製造を続けてきました。近年は、90歳超の職人・岡部キンさんが一人で目立てを手掛けてきた爪ヤスリが大ヒット。高級爪ヤスリや、医療現場の声から生まれたテーブルなどに置いて片手で使える爪ヤスリ、かかとを磨くヤスリなど、次々と新商品を発表しています。

お問い合わせ

有限会社柄沢ヤスリ

○住所:燕市燕 598-5
○TEL : 0256-63-4766
○HP : http://www.yasuri.net

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※本記事の内容は取材・投稿時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報につきましては直接取材先へご確認ください。