想いを、共感・支援に変える編集術。-クラウドファンディング挑戦の裏側を赤裸々に語ります!イベントレポート

2021.5.26

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仕事でも、私的な活動でも、地域での活動でも、私たちは他の誰かと一緒に行動することが少なくないはずです。そんなときに自分の想いをどのように伝え、共感や支援に伝えればよいのでしょうか。

今回はそんな悩める活動家に向けて、まさに想いを共感・支援に変えるプロジェクトであるクラウドファンディングの挑戦者から、その方法を教えてもらおうとイベントが行われました。

聞き手となったのは、茅葺き古民家保存プロジェクトの唐澤頼充さん。ゲストには、身寄りない方の支援をしたい「身寄りなし問題研究会」の須貝秀昭さん、新潟初の〈食の図書館〉をつくるプロジェクトの高橋真理子さんを迎えてお話しを伺いました。

クラウドファンディングに挑戦したい人はもちろん、挑戦はしないけど活動をする上で悩んでいる、自分の想いを他の人にどうやって伝えたらいいかと考えている人にとって参考になる言葉があるはずです。ぜひご自身の活動を振り返りながら、レポートを読んでいただければと思います。

アパートの契約ができない、就職ができない。身寄りのいない人を支援する「身寄りなし問題研究会」

最初に話をうかがったのは、「身寄りなし問題研究会」の須貝秀昭さん。普段は、高齢者のなんでも相談室である地域包括支援センターで働いているそうです。

現在の勤務先は、県内の都市部の中で最も高齢者率が高いといわれる新潟市下町。下町はもともと新潟港の中心地で、造船や芸妓、流しなど、市外から仕事を求めてやってきた人が多い地域。こうした人が年齢を重ね、身寄りがいないことが課題となっているそうです。

身寄りがいないと、アパートの契約ができない、就職ができない、施設に入所できないなど、自分の力で何もできないことが多い。親戚はいても疎遠だったり、近くに頼れる人がいない状況に陥っているそうです。

そんな人たちを支援しようと立ち上げた「身寄りなし問題研究会」。今回は、活動を広く発信するホームページを制作するため、クラウドファンディングを立ち上げました。

2021年4月23日で募集は終了。最終的には目標金額の40万円を大幅に上回る、77万2千円もの支援金額が集まりました。

新潟県の食文化を研究してきた先生の蔵書を誰でも閲覧できるように。〈食の図書館〉をつくるプロジェクト

続いてお話しされたのは、新潟初の〈食の図書館〉をつくるプロジェクトの高橋真理子さん。新潟を伝える保存版観光誌『新潟発R』を発行する、株式会社ニールの代表でもあります。

クラウドファンディングを始めたきっかけは、2018年夏に『新潟発R』の取材で新潟県の食文化を半世紀以上研究している本間伸夫先生のお宅にお伺いしたこと。取材後に記事をまとめていると、「蔵書の整理をしているのだが、編集部で活用するのでしたら、私の書籍や資料を譲りますよ」と電話をもらったそうです。

高橋さん自身、「新潟は食と酒を売り出そうとしているのに、文献にあたる場所がない、受け皿がないことを以前からもったいない」と感じていたそう。

先生の貴重な蔵書を受け継ぐなら、もっと多くの人の目に触れる機会を作ろうと、白山公園近くにあるアパートの1階に私設図書館《食の図書館》を立ち上げることになりました。その改装費用や書棚などの設備費、書籍リカバリー・分類費のためにクラウドファンディングを始めたそうです。

2021年5月6日で募集は終了。最終的には目標金額の314万円を超える、344万8千円もの支援が集まりました。

築250年の古民家を次の世代へ受け継ぐために。「茅葺屋根葺替えプロジェクト」

最後にプロジェクト紹介をしたのは、本イベントの主催者でもある唐澤頼充さん。新潟市西蒲区福井集落で、250年以上守り継がれてきた福井旧庄屋佐藤家の保存活動を行う「NPO法人福井旧庄屋佐藤家保存会」のメンバーです。

福井旧庄屋佐藤家は、江戸時代後期に建築された三根山藩の庄屋の役宅。長年、空き家となっていたこともあり、取り壊されることを聞き、平成10年に地元有志が集まり、保存活動を始めたそうです。

今回のプロジェクトは、茅葺屋根を葺き替える資金を集めるため。茅葺屋根の葺き替え工事には、全部で500万円を超える資金が必要なのだそうです。文化財団ではなく、地域住民が主体となって守り継いできた佐藤家。次の世代に受け継いでいくための葺き替え工事、そして一緒に佐藤家を守り継ぐ仲間を探すためにクラウドファンディングに挑戦することにしたそうです。

ユニークな返礼品を取り入れたり、文章で”危機感”を表現したりと、プロジェクトページは試行錯誤

それぞれのプロジェクトがなぜ立ち上がったかを聞き終わると、クラウドファンディングのページを書くときに工夫したことの話に。須貝さんは、過去に取材を受けたときの写真を使って、プロジェクトページを書いたといいます。

「身寄りなし問題の活動を始めてから、さまざまなメディアに取り上げていただいたので、そのときの写真をページ内でたくさん使わせてもらました。あとは、クラファンの運営会社から『リターンは、ユニークなものも入れたほうがいいよ』と言われたので、『おっさんレンタル』を入れてみたり。新潟で『おっさんレンタル』をしている人がいないので、メディアの人が面白がって取材にきてもらったりも。最終的には、身寄りのない人が身寄りのない人のところに手伝いに行く互助機能を有するコミュニティを作っていけたらと思っています」

高橋さんは、『新潟発R』の経験とチームメンバーに助けられ、叱咤されながら、プロジェクトページを完成に仕上げていったそう。

「ページを作る上では、スタッフと何度もやり取りして書き換えたりして。最初はきれいな郷土料理の写真をメインにしていたのですが、スタッフの声で本が積み上がった写真に。どんなプロジェクトなのかが伝わるメインになったんじゃないかなと思っています。文章を書く上でも、現在困っていること、本間先生が価値ある仕事をしてきたことを伝えるようにしました」

唐澤さんも、高橋さんと同じく、読者がプロジェクトページを読んで「大変だ…!」と思ってもらえるような文章を心がけたといいます。

「高橋さんがおっしゃられたように、私も危機感が伝わるように意識をしていました。保存会のメンバーが高齢化して、職人も高齢化をしている。繋いでいかないとという焦りを見えるようにして書くようにしましたね」

直接一人ひとりと対話して、プロジェクトの意義を伝える

実際にプロジェクトが始まると、今度は資金集めの重圧がのしかかる。イベントでも話題は、どんな人が支援をしてくれたのか、どうやって支援の輪を広げたのか、支援者の話になっていきました。

須貝さんも高橋さんも、何年も前から知人の繋がりを作ったり、クラウドファンディングをすることを伝えたりと、小さくも確実な種まきをしていたといいます。

須貝「僕は7年くらい気になる人とサシ飲みをしていたんです。そうすると結構と膨大な数になる。そういう知り合いにメッセンジャーを一つひとつ送りました。ただ、負担に思ってほしくなかったので、『※これは一斉メールなのでスルーしてもらってかまいません』と注意書きをつけて。結果、支援してくれたのは知り合いが7割、知人の知人が2割、知らない人が1割くらいですかね」

高橋「私も3年前から、取材に行くたびに今度こんなのをやるんですとパンフレットを作って広報をしていました。色んな人に一緒に発信する側になっていただくことを意識しました。そのために直接会いに行って、背景を説明したりもしましたよ。食の業界にいると気づかなかったのですが、本間先生を知らない人は結構多い。だからこそ、相手の背景を配慮しながら、一つひとつ説明をしていきました」


当日は1時間半にも及んだ当イベント。他にも、共感を生むために工夫したポイントや無関心な人に届けるための工夫、自分の想いを相手に伝える会話のテクニックなど、さまざまな観点からお話を伺えました。こうした工夫点もお伝えしたいのですが、全部をこのレポートに含めるのはなかなか難しい……。

気になる方は今からでも動画を購入することができるので、ぜひチェックしてみてくださいね。

▼動画を購入したい、気になる方はこちら。
https://note.com/y_karasawa07/n/n7d7f3985390d

▼登壇者3名のプロジェクトページ
①身寄りない方の支援をしたい「身寄りなし問題研究会」須貝秀昭さん
https://camp-fire.jp/projects/view/370314
②新潟初の〈食の図書館〉をつくるプロジェクト 高橋真理子さん
https://n-ippo.jp/project/detail/754
③暮らしの記憶を繋ぐ 『生きた古民家』を守り継ぎたい 。茅葺屋根葺替えプロジェクト 唐澤頼充さん
https://camp-fire.jp/projects/view/410826
★唐澤さんのプロジェクトは、5月31日まで継続中!興味を持った方はぜひプロジェクトページをご覧になってくださいね。

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※本記事の内容は取材・投稿時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報につきましては直接取材先へご確認ください。