※この記事は新潟県中小企業団体中央会・ものづくり支援センターさまとのタイアップ記事です。
「前向きに自らを変化」させることで、新たな価値を生み出す「Change Leader」をピックアップ。
第20回は、成長が見込まれる航空産業に参入するため、厳格な評価基準に対応できる検査機器を整えた新潟メタリコン工業。一貫生産の需要が高まる航空機部品製造において、他会社と協力しあうことでさらなる販路拡大に挑みます。
検査工程を内製化することで、質の向上と納期短縮を目指す
増加する旅客需要を背景に、航空機業界は成長産業として注目されています。航空機は一度機体を造ると20年以上同じ機体を使うため、製造会社は長年取引が可能な会社を欲しがる傾向にあります。
金属の表面を加工するめっき加工業者であり、幅広い加工技術を持つ新潟メタリコン工業は、航空機業界の長期需要に注目。航空機の表面処理を行う業者は全国でも数少ないこともあり、航空機分野で必須の「JIS Q 9100」を取得し、業界に新規参入しました。受注を徐々に増やす中、人命を預かる飛行機の厳格な規格を守るため、より精度の高い検査体制を社内で構築する必要性に迫られました。
そこで、平成25年から29年まで計4回にわたってものづくり補助金を活用し、外部に委託していた評価システムの内製化を実施。平成25年度には品質の改善に必要な電子顕微鏡を、翌26年度・27年度は厳しい検査基準に適応した機器の導入、29年度は表面の欠陥を検出できる非破壊検査装置を導入しました。
こうして、重要な部品の受注業者にふさわしい評価システムを整えることに成功。同時に新潟市と切削や板金、組立、表面処理業など計7社でつくる「NIIGATASKY PROJECT」にも参画。生産設備を一点集中させた「戦略的複合共同工場」にも入居し、他会社と共同の生産体制を整えています。
表面や断面の検査、薬品分析の内製化で品質を改善
平成25年度には表面や断面をミクロで観察できる走査型電子顕微鏡を導入。「アノダイズ処理」は特定の素材において不良が多かったが、表面を観察したことで品質改善に繋がりました。平成26年度には使用薬品の厳しい管理基準に即するため、分析装置など計4種を導入。不純物の濃度を分析することで、添加剤の添加や処理液更新など随時対策ができるようになりました。
厳しい試験を内製化し、安定的な生産体制を整える
全国で初めて導入された、水素脆性破壊検査装置。一度に2種の試験が実施できる 塩水噴霧試験機。製品によっては 2週間にわたって塩水を噴出する ことで性能を測る
航空機の部品を製造する際は、材料であるアルミ合金や鉄鋼の導電率や硬さを、表面加工後は塩水や水素に対する耐久性を確かめる必要があります。以前は外注していた検査の内製化を図るため、検査機器など計6種を導入。特に、耐久性の検査機器は月に一度義務付けられている試験の内製化に必要不可欠。導入後は、平均5日の納期短縮に成功し、安定的に生産できる体制を整えました。
エンジン部品受注にも対応できる非破壊検査の体制づくり
欠陥の内部に浸透した浸透液が表面に現れることによって欠陥を発見できる 具体的には暗室内でブラックライトを用いて、蛍光色の浸透液の有無 を確認する
航空機部品の表面加工の受注が増加する中で、次に目指したのはさらに高い品質が要求されるエンジン部品の処理でした。その際に必要となる微小な表面欠陥も検出可能な「蛍光浸透探傷検査装置」を導入。同時に、航空機部品の非破壊検査に携われる人材育成にも注力し、最低2人の人材を育てる計画です。これにより、エンジンなどの重要な部品も、一貫生産で受注可能な請負体制が整いつつあります。
他会社と協力することで共同受注を目指す
大手重工や海外メーカーはコストや手間を抑えるため、一貫生産で発注できる製造元を求めています。そこに食い込むためひとつの部品を一貫して生産できる「NIIGATA SKY PROJECT」が開始されました。2019年には県内航空機部品メーカーの営業や受注をまとめて担う新潟エアロスペースが本格稼働。今後は海外との競争も予想されますが、私たちの強みは日本ならではの品質の高さと生産設備の一点集中による納期の短さ。大手重工にしっかりと説明しながら、そのメリットを感じてもらえればと思います。
技術紹介:アノダイズ処理
アノダイズ処理(陽極酸化被膜処理)は、アルミニウムを酸の中で陽極電解し、酸化被膜を生成させることで耐食性、耐摩擦性、絶縁性などを向上させる。航空機部品に多く使われており、一般的にはアルマイトともいう。
会社概要
昭和25年にめっき加工業者として創業し、昭和28年にはより広範囲で活用できる金属溶射(=メタリコン処理)の技術を取得。その後も常に積極的な技術取得を行い、現在はめっき・溶射・塗装と幅広く対応している。2011年からは航空機業界にも参入し、新潟市が携わる「NIIGATA SKY PROJECT」にも参画。関連会社と航空機部品の共同受注を目指している。
お問い合わせ
新潟メタリコン工業株式会社
○住所:新潟市東区下木戸1-18-2
○TEL : 025-274-7301
○HP : https://www.nii-meta.jp
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