この記事のライター あらきやすし(会社員)
『佐渡』は、「能」が盛んな島としても有名です。
佐渡はその昔(室町時代頃まで)流刑の島とされてきました。しかし、佐渡に流されたのは順徳上皇をはじめとした皇族や貴族、僧侶や文化人などの政治犯でした。その中には、「能」の大成者として知られている世阿弥も含まれています。
しかし、佐渡で「能」を広めたのは世阿弥ではなかったようなのです。
佐渡で「能」が広まったのは江戸時代に入ってからになります。
佐渡金山が発見されると、徳川幕府は佐渡を直轄地とし、大久保長安を初代の佐渡奉行に任じました。この大久保長安の祖父が能役者だったことから、広く佐渡の領民に「能」を奨励したと言われています。
その結果、佐渡では農民が農作業中に「能」を口ずさむとも言われました。これほど庶民の間に能が広まった地はたいへん珍しいのです。
国内の1/3の能舞台が佐渡に集中している
そんな背景もあり、佐渡には今でも30を超える能舞台が残っています。これは日本国内の能舞台のうち1/3を占めるとも言われており、そのほとんどがお寺や神社の境内にあります。
代表的な能舞台の一つが、こちら真野町にある「大善神社 能舞台」です。
茅葺屋根の立派な能舞台です。周囲の青々とした芝生も素晴らしく、静かな佇まいが何とも言えません。
もちろん、ただ能舞台が保存されているだけではありません。春から秋にかけて、島内各地の能舞台で「能」の公演が催されます。その多くは、夜に薪を焚いて行う『薪能』(たきぎのう)です。
特に6月は例年「能月間」と呼ばれ、毎週末、多数の演能が開催されます。
「薪能」を鑑賞してきました
一昨年の6月ですが、新穂 武井地区にある『武井熊野神社薪能』を鑑賞してきたので、その様子をレポします。
この時間帯は地元の子供達による「仕舞」が行われています。子供の頃から「能」を演じる、佐渡でいかに「能」が定着しているかが分かります。
あたりはすっかり薄暗くなっていて、なんとも言えない幽玄な雰囲気に境内は包まれています。
この日の演目は「菊慈童」(きくじどう)です。
なんだか櫓(やぐら)みたいな大道具が出てきました。
「菊慈童」の話の筋は概ねこんな内容です。
物語の舞台は古代の中国。不思議な水が湧き出る※懸山(れっけんざん)の水上の探索の勅令を受けた勅使は、そこで不思議な少年に出会います。(注:※=麗に阝)
七百年もの間、生き続けているという不思議な少年が、菊の花に囲まれ清々しく楽を舞います。
ちなみに観覧者には解説書が配布されるので、能に詳しく無い人でもストーリーを把握し、楽しむことが出来ます。
舞台に置かれた大道具の幕が外れると、中から謎の少年が登場し、菊の花の前で舞い続けます。
実はこの「薪能」は、写真撮影OKでした。ただしフラッシュ焚くのは禁止です。
そんなわけで、大きなレンズを装着したカメラと三脚を抱えた人がたくさんいらっしゃいます。
気軽に楽しめる、佐渡の「薪能」
席は自由、椅子は無く、ビニールシートの上か芝生の上で鑑賞します。
実は佐渡の「薪能」の多くは、鑑賞料が無料!のものから500円ほどと、たいへん敷居が低くなっています。(中には2, 500円ほどの演能もあります)
本土で「能」を鑑賞しようと思ったら、数千円掛かるのが普通ですが、「能」が広く普及している佐渡だからこそ、気軽に「能」を楽しめてしまいます。
今まで「能」を鑑賞したことが無い、よく分からないという人も、この価格帯なら「ちょっと鑑賞してみようかな」と思えますね。
さらに、各地と「薪能」会場を結ぶ無料の『薪能ライナーバス』も運行されます。(利用には事前予約が必要です。また運行日や運行ルートは日により異なります)
これまで能に触れたことがない方でも、肩肘張らず参加できる佐渡の能。ぜひ一度体験してみてください。
佐渡の演能のスケジュールはこちらでご確認ください。
→ 『佐渡にこいっちゃ 佐渡薪能・演能スケジュール』( http://sadokoi.com/takiginou/ へリンク)
サイト紹介
(社)佐渡観光協会 佐渡の薪能
http://www.visitsado.com/main_page/06.html
勝手に佐渡観光情報サイト 佐渡にこいっちゃ「佐渡薪能 演能スケジュール」
http://sadokoi.com/takiginou/
ライター あらきやすし(会社員)
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