この記事のライター 唐澤頼充(ライター/リサーチャー)
新潟市民芸術文化会館、通称「りゅーとぴあ」。この劇場には専属の芸術団体がいるのをご存知でしょうか?名前は「Noism(ノイズム)」。2004年に設立され、2013年9月シーズンより活動10年目を迎えた日本初の劇場専属舞踊団です。
そのNoismの付属研修生カンパニーである「Noism2」が3月7日より春の定期公演を開催します。今回で5回目となるNoism2春の定期公演では、Noism2専属振付家兼リハーサル監督の山田勇気さんによる新作「Painted Desert」。そして、Noism1所属の藤澤拓也さんによる新作「Four Fours」と、2つの新作を発表する予定。この春公演の公開リハーサルを取材しました。
まずは、山田勇気さんの「Painted Desert」から。アメリカはアリゾナ州、化石の森国立公園に実在する砂漠地帯の名前から取ったこの新作。夢のような在るのか、存在しないのか、意味を探すような作品になったとのこと。
「Painted Desert」は、非常に静かだなぁという印象。それもそのはずで、音楽に都会の雑踏をはじめ、実際に世の中にある生活音が多く使われていた印象。会場には音楽と、ダンサーが足を踏みしめるギュギュッ!ギュギュッ!という音が響き、スタジオ全体がどこか緊張した空気に包まれていました。
ダンサー全員が一緒に踊るという場面があまりなく、意味がいろいろと散らばっているような、どこか儚いような・・・
それでいて一つ一つの動きの力強さが伝わってきます。椅子と真っ白なキャンパスがぽつんと置かれている空間はどこか広く感じました。
とても複雑そうな作品でしたが、リハーサルで見せてもらえたのは一部。「最初から最後まで通してみることで何かが見えてくる作品」と終了後の囲み取材で山田さん。衣装や光の演出が加わる本番では、さらに独特の世界観が形成されそうです。
最後には山田さんによる指導の様子も見ることができました。
細かい動き一つ一つを何度も繰り返し体に覚えさせている姿は真剣そのもの。山田さんの「空間に塗るように(手を動かして)」、「うわぁおんって(体を動かす)」、といった独特な言葉での指摘と、実際にやってみせる様がまさにその言葉を体現しているようで、ダンサーの凄みを感じました。
続いて、藤澤拓也さんによる「Four Fours(フォー フォーズ)」。1881年に科学雑誌「ノレッジ」に掲載された数学パズルで、4つの4という意味のこの作品では「自分が作りたい世界観を追求した」とのこと。「今回は時間がたくさんあったので、力が入りすぎた」とも。
こちらは、山田作品とは打って変わって壮大な音楽と、ダイナミックな動きの作品。顔を隠し、白と黒の衣装を身にまとったダンサーが明るいリズムで踊り始めます。
黒と白表裏になった4枚の板、立てたり、持ち上げたりと活用し空間をどんどんと作り変えています。
白と黒の衣装。白と黒の板。仮面を付けているダンサーと、外すダンサー。それぞれの対比に意味がいろいろと含まれていそうです。
囲み取材では「数字の4を頭に入れて見ると、より楽しめます」とのことでした。この作品には脚本もあり、当日配布するそうですので、ストーリーを追いながら楽しめそうですね。
どちらも個性的で、違った楽しみ方ができそうな2作品。残り1週間でさらに磨きをかける若手ダンサーの躍動が楽しみになりました。
私はNoism2の舞踊は初めて見たのですが、その力強さに驚きました。ひとつひとつの姿勢、動き、表情。どれもが日ごろの鍛錬の積み重ねを感じさせるものです。囲み取材で山田さんが「みんな体が大きくなってきた」とおっしゃっていましたが、真剣にダンスに打ち込む姿勢と、鍛え上げられた出演は美しさを感じました。なんとなく、「職人」の美しさに似ているなとも。
きっとダンスを見たことがなかったり、アートになじみのない人でも、その空気に生で触れるだけで感じるものがあると思いますよ。
新潟市以外にも、3/14聖籠公演、3/15燕公演もありますので、ご都合つく方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか?
公演情報
- Noism2春の定期公演2014 新潟公演
- 日時:2014年3月7日(金)19:00・8日(土)17:00・9日(日)13:30/17:00 ※全4回公演
- 会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈スタジオB〉
- 入場料:1, 500円(全席自由)
- Webサイト:http://www.noism.jp/
ライター 唐澤頼充(ライター/リサーチャー)
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