この記事のライター 唐澤頼充(ライター/リサーチャー)
3月1日いよいよJ1リーグが開幕しました。アルビレックス新潟の開幕戦はアウェーでベガルタ仙台との対戦。今回はテレビで観戦しました。
キャンプで試していた形ではなく、昨年終盤のメンバーをベースそのまま。東口が移籍したGKに守田、三門が移籍した右SB松原が開幕スタメンとして起用されました。2013年得点王ランキング2位のFW川又を中心に、豊富な運動量をベースとしたアグレッシブな守備。スピード感ある攻撃でゲームを組み立てます。
柳下監督は開幕前に「今年は昨年より新潟がボールを持つ時間が長くなると思う」と語っていました。その通り立ち上がりは新潟がボールを持ち組み立てて攻める場面が多く、ハイプレッシャーからのショートカウンターというスタイルが出せません。逆に仙台が新潟のお株を奪うような守備から攻撃への速い切り替えで試合運びで主導権を握りました。新潟はペースを握ることができず、ピンチが続きます。
20分過ぎから試合が落ち着き始め新潟が今年のキャンプから取り組んでいた、ダイアモンドの形を作る動きが徐々に出てきます。しかし、仙台のハイプレッシャーが効いて、なかなかペースを握ることができません。なんとなく悪い流れそのままに、24分新潟の得点源FW川又が負傷交代。前半11分に味方同士の接触で足を痛めてしまいました。交替で入ったのは鈴木武蔵選手。リオデジャネイロ五輪を目指すU-22日本代表の代表でもありエース。ブレイクが期待されるホープです。
ボールがつながり始めた新潟は35分。右SBの松原から鈴木武蔵へ楔のボールが。ポストプレーでボールを落としたところに田中達也がペナルティエリア右外から強烈なシュート!しかし、キーパーのファインセーブに防がれます。このプレーから鈴木武蔵選手がポストとしてうまく機能しだし、敵陣深くまではじめました。
そして迎えた37分。右から松原が上げたクロスをDFが手で止めハンド。新潟がPKを獲得。キッカーはレオシルバ選手。ゆっくりと細かくステップを踏みながら、落ち着いてキーパーのタイミングを外しゴール左上に決めてアルビが先制点を獲得!
42分には、田中亜士夢のボール奪取から一度鈴木にボールを預け、再びサイドを駆け上がった田中亜士夢へ。その間に中には鈴木、田中達也、岡本らが一気に駆け上がります。田中アトムのクロスにファーから走りこんだ岡本が飛び込みますが、シュートはバーの上。新潟らしい守備から攻撃への素晴らしい切り替えから決定機を演出しました。
急な出場でゲームに入れるか心配した鈴木武蔵でしたが、裏に飛び出したりポストプレーに入ったりとしっかりと機能。いい流れのまま前半が終了。
後半は両チームともメンバーそのままにスタート。しかし立ち上がりすぐ、ハイボールの競り合いでCB舞行龍ジェームズの顔に相手の肘が入り、まさかの負傷交替。交替枠3枠のうち2枠を負傷交替で使ってしまうというアクシデントが発生しました。
交替で入ったのは今シーズンから新潟に戻ってきた大野和成選手。突然の交替でバタついている50分。ペナルティエリア内で間接フリーキックを取られピンチ。このプレーからのこぼれタマに富田選手が蹴り込みゴール。仙台に動転に追いつかれて一しまいました。
60分頃からは、負傷交替のアクシデントから落ち着いた新潟が徐々にペースを握ります。連動したプレスと早い攻撃は昨シーズンからの積み重ねてきた武器。さらに鋭さを増した印象を受けます。
ボール奪取。つなぎと、新潟のリズムがかなり出てきました。
72分レオシルバの素晴らしいボール奪取からドリブルで持ち上がりゴール左の鈴木武蔵へ。決定的な場面でしたが対角に打った鈴木のシュートはわずかにゴールの右に逸れてしまいました。
直後の73分に柳下監督は最後のカードを切ります。
FW田中達也と交替でホージェル・ガウーショが投入。そのままFWの位置に入りました。運動量が落ちてきた仙台に対して、運動量に抜群の自信を持つ新潟がチャンスを連発し始めます。78分岡本の左足。79分にホージェルが裏に抜けチャンスを作ります。
そして89分。コーナーキックのこぼれ球を、右サイドのホージェルへ。そのパスを受けたホージェルが右サイドからドリブルで中へ持ち込みペナルティエリア正面から強烈なシュートを叩き込みました!ゴール左上に突き刺すワンダフルゴール!ホージェルの独特なボールタッチが相手のタイミングを完全に外しました。
その後はピンチもありながら運動量で上回る新潟がしっかりと時間を使ってロスタイムを終えタイムアップ。2-1のスコアで開幕初勝利を飾りました。
試合を見ての感想は「新潟強いじゃん」という素直なもの。特に負傷で2人が交代するというアクシデントに見舞われながらも、交替で出た選手が試合のレベルを下げることなく、すんなりと戦力に。選手層の厚みが増し、昨年ピッチで実現していたサッカーに磨きをかけているなぁと思いました。
今年から10番を背負う田中亜士夢選手は激しい運動量と、冷静な判断でまさに新潟の象徴と言えそうな動きを見せてくれています。キーになるのは今年もボランチで攻守にチームの舵を取るレオシルバ選手。豊富な運動量とボール奪取能力、パスを散らす能力と全てがリーグトップクラス。彼を見るためだけにスタジアムに足を運ぶほど価値のある選手だと思います。
不安要素をあげるとすれば、GKとDFの連携。守護神東口選手は広い守備範囲と正確なロングフィードでチームを支えていました。開幕スタメンを飾った守田選手は、守備範囲が東口選手と比べて狭いのか、DFがGKに任せたい場面で飛び出して来れないようなシーンがいくつか気になりました。試合を重ねるうちに解決していけばいいのですが、気になるところです。
川又選手と、舞行龍選手の怪我の状況が心配ですが、結果、内容とも満足できる開幕戦。今年のアルビの飛躍から目が離せません!
ライター 唐澤頼充(ライター/リサーチャー)
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