【インタビュー】十日町の限界集落に現れたシェアハウス、ギルドハウス十日町  そこで営まれる「新たな生き方・働き方」とは 【前編】

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池トヒロクニこの記事のライター 池ト ヒロクニ(大学生)

 

新潟県十日町市の山間の限界集落に2015年の春、一軒のシェアハウスがオープンしました。

その名前は「ギルドハウス十日町」

ギルドハウス十日町の設立者である、西村治久さんをインタビューしました。

シェアハウスといえば数年前より話題となっている、一つの家に家族でもない他人同士が数人で生活するスタイルの暮し方。

首都圏を中心に盛り上がりを見せ、その波が地方都市まで浸透してきたのがつい最近です。

そのシェアハウスをなぜあえて中間山地の限界集落で始めたのか。住む場所だったらいくらでも有り余っているのに!

彼・彼女らが一緒に住むのには大きな理由がありました。ギルドハウス十日町で営まれる「新しい生き方・働き方」。

今までの社会では見過ごされてきた、大切なものを取り戻すために。次世代の価値観を追求するために。

ギルドハウス十日町とはいったい、何なのか。

 

オープンな場としての、「住み開き古民家シェアハウス」

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―― この場所(ギルドハウス十日町)ってどんな場所なのか分かりにくいと思うんですよね。ただの古民家のシェアハウスでもなく、コワーキングスペースの面も持っている。今までにないような新しい場所じゃないですか。なので改めてこの場所がどんな場所なのか、コンセプトをお話しいただけますか。

西村さん(以下敬称略): コンセプトね。ギルドハウス十日町のコンセプトは、住み開きの古民家シェアハウス。住み開きっていうのは全国に実践者がいるんだけど、住まいの一部を開放する、交流空間にするっていうものなんだよね。古民家のシェアハウスは、おそらく全国にいくつかあると思うんだけど、それを住み開きというコンセプトに乗せているのは、たぶんうちだけなのかなって思っていて。

なんでわざわざ住み開きを付けたかというと、その、シェアハウスって基本的に交流するのは住民を中心としたその友達伝いになると思うんだけど、自分はもっと広範囲に全然住民とは知り合いじゃない人もふらっと訪れるような場所にしたかったので。それこそ旅人とか。あとその地域へ移住を考えている人がふらっと立ち寄れて、地元の人と交流できる場所があったらいいなぁなんて思いもあったり。自分自身も旅人なんで、旅先でふらっと寄れて、そこでただ単にお茶飲んでカフェみたいな形で終わるんじゃなく、いろんな人と交流できるすごくオープンな場所を作りたかったから、住み開きの古民家シェアハウスってコンセプトにしたんだよね。

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で、あの・・・コワーキングスペースだったり、ゲストハウスだったり、いろんな交流の場所の形ってあるけど、そういう場所って基本的に商業目的がベースになっていることが多い。商売を前提にするのもいいんだけど、自分の場合もうちょっとなんていうかな・・・商売が前提ってよりも、それを抜きにして集まった人々のなかで、共感とかが生まれて、こう二次的に商売的なビジネスが生まれたり、いろんなコラボが生まれたりする流れのほうが自然かなぁなんて思っていて・・・。だから最初にお金を払って入る場所じゃなく、お金を払わなくてもふらっと入れるオープンな場所で、そこから展開が生まれるような、そんな流れにしたかったのさ。

―― ほうほうほう。

西村 だから、ゲストハウスとかコワーキングスペースって名前を前面に出さずに、住み開きの古民家シェアハウスっていうのがベースにありつつも、コワーキングスペースとしても使えるし、ゲストハウスのような機能も果たすようなね。そういう家が理想、イメージとしてあったんで、そんなコンセプトでこのギルドハウス十日町は実践してるという感じ。

―― なるほど。ギルドハウスという名前はどこから?

西村: ギルドっていうのは、中世ヨーロッパに実在した協同組合みたいなもので、そこにはいろんな人や情報が集まって、そこから仕事が見つかったり、仲間が見つかったりという場所だったのね。そういうのを現在にリデザインして再現したような場にしたかったのでギルドハウス十日町っていう名前にしたんですよ。

 

 山の中にしかないものを求めて

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―― なるほど。ここで大きな疑問が、なんでわざわざこんな中間山地にそれを作ろうと思ったのかなあってところで、どうせならもう少し人のアクセスしやすいところでもいいんじゃないかなあと多くの人が感じると思います。

西村: 一つはね、中間山地域って場所自体にすごく魅力を感じたっていう。もちろんほら、大きな街に作ると人がたくさんいる分、それだけ人が来るという論理になる訳だけど、あえて中間山地域に作るということがある程度のフィルターの役目をしていて、こんなところにあるけど、それでも来るような人たちっていうのはある程度前のめりの人が多くて何かしらの目的を持っている人が多いんでね。

あと中間山地域自体が川の上流にあって、山に囲まれているところで、日本の原風景が残っていると。もともと人間っていうのは川を下って住む場所を広げてったりしてきたので、ある意味川をさかのぼることは歴史をさかのぼることに等しいものがあるんだよね。

―― はい。

西村: そこに日本の人の暮らしの原点があるわけで、ここに住むとそれがよくわかるんだけど、山菜を採り、ご近所さんとの支えあいの中でものを貰ったり譲ったりっていう、お金じゃない部分での付き合いってものがすごくあって、まあお祭りなんかもそうなんだけど。そういう暮らしのほうが無理もなく自然体で、時間を急かされることもなく楽しく暮らしていくことができる

―― なるほど。

西村: あとはその中山間地域のその人と人とのつながりってものすごく強いので、様々なコミュニティを色々と作ってきた自分にとってはすごく学ぶことも多くてね。あと十日町は地域おこしの盛んな地域なので、自分のように地域おこしに近いことを仕掛けてきた人間からすれば、今まで新潟市とか都市で仕掛けてきたことを、中山間地域という場に視点を移した時、ちょっとローカライズした仕掛け方ができるというのもすごく楽しみなのね。Startup Weekendとか、コワーキングスペースとかを中山間地域で仕掛けたときに、どういう風にやっていくべきなのか。ちょっとテーマを変えてやってみるべきなのか。そもそもの作り方自身、コンセプトの方向性を考えるだけでも楽しいしね。

 

 情報の発信にひと工夫

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―― 中山間地域をあえて選んだ理由にもそんなに奥深い理由があったんですね。ところで、西村さんは「ギルドハウス十日町」とまた別に「まったり庵」というものも数年前から手がけているじゃないですか。

西村: うん。

―― まったり庵はどこかの場所に実在するのではなく、西村さんの頭の中にある概念上のモノなのだと思うんですけど、そのまったり庵というのはどういったコンセプトでしょうか。

西村: うん。ギルドハウス十日町と同様に、住み開きの古民家シェアハウスなんですよ。

―― まったり庵を体現化したのがここってことなんですね。なるほど。

西村: そのまったり庵っていうのはあくまでコンセプトなんで、それを体現化した第一弾がここで、第二弾が胎内市になるのか、他の地域になるのかわからないけど、そのコンセプトをつかったシェアハウスはこれからどんどん増やしていく予定。

―― ふんふんふん。なるほど。最初私はそこのところをよく理解できずにいて、まったり庵って場所があるのかなぁって・・・。

西村: そうそう、あれもね、戦略の一つで。

―― そうなんですか!!

西村: まだ体現化、具現化したシェアハウスが無いころから、自分はこういうシェアハウスを作りたいって言って、自分のイメージを目に見える形で、フェイスブックページとかで情報発信をしていたんだけど、それはやっぱり自分のやりたいことを前面に押し出してアピールすることによって、「西村さんっていうのはいずれこういう古民家シェアハウスを作るんだな」、「であれば自分の知り合いの古民家を紹介しようかな」って事前にそういう風に動きが生まれる。

―― なるほど。なんか一本、旗を立てとくって感じですかね。

西村: そうそうそう。水面下で探していても、あまりスピード感がね。フェイスブックページがあって、自分の活動をあそこで発信していくことによって、やっぱり目につく方がたくさんいらっしゃって、雑誌の取材をうけたこともあるしね。それも自分の情報発信力を事前に立てといたおかげかなと。で、まあそれがあったからこそ、ここが出来ているわけで。

―― そうですね。なるほど。場所ができる前から…。

西村: その間、いろいろとコンセプトもブラッシュアップできたしね。いろんな人とつながって、いろんな人と話すことによって、まったり庵っていうのはもうちょっとこうあるべきだってだんだんとね。それもよかったしね。

 


〈つづきます〉

後編はこちらから

 

イベント情報

◇ギルドハウス十日町でBBQパーティー!!

 

◇胎内市シェアハウスプロジェクト

  • 十日町の次は胎内市にも古民家シェアハウスをつくろう!みんなで話し合おう!
  • 日時 2015年6月21日(日)13:00 ~ 17:00
  • 詳細はこちら https://mattarian.doorkeeper.jp/events/24913

池トヒロクニこの記事のライター 池ト ヒロクニ(大学生)

 

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※本記事の内容は取材・投稿時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報につきましては直接取材先へご確認ください。