この記事のライター 唐澤頼充(ライター/編集者)
地域には、地域の人目線で歩いてみないと気付かない隠れた魅力がたくさん。「越後長岡まちめぐり」は長岡市にあふれるそんな宝を再発見するまちめぐりです。今回は10/29に開催された三島と和島を巡るコースをレポートいたします。
三島と和島地域の共通キーワードは「湧水文化と曽我物語」。湧水が育んだ醸造文化や郷土の偉人について、幻のバス路線を巡りながら学びました。当日のスケジュールは以下の通り。
- 集合:9:30さいわいプラザ
- 【午前】三島地域①「中川酒造」~②「寛益寺・曽我禅師坊の墓」~③「逆谷集落の散策」
- 昼食:④妙法寺(昼食)
- 【午後】和島地域⑤「池浦酒造」~⑥「井戸神様」~⑧「住雲園」
- 解散:15:30さいわいプラザ着
まずは三島支所で参加者全員が合流しスタッフ紹介が行われました。今回は参加者17名、スタッフはなんと21名(笑)スタフとして参加する地域のボランティアの方々と一緒にツアーを楽しみます。
①三島地域「中川酒造」
最初の見学場所は越乃白雁で有名な「中川酒造」さん。明治の中頃に両替屋さんから5代目の猶右エ門さんにより創業されました。
今回の資料の中で湧水マップが配られたのですが、この三島地域脇野町は大変湧水の多い地域なんです。そのため脇野町周辺では最盛期で6軒の造り酒屋があったそう!!今では3軒に減ったと言いますが、この人口3, 000人程度の小さな町にこれだけの酒屋があるのは驚きです。それも、地域の人が極度の酒好き!なのではなく、良質な水が得られる土地だからなんだそうですよ。
蔵の中を説明をしてもらいながら見せてもらいます。「明治蔵」はそれこそ創業当初から使っていた蔵。歴史を感じますね。
そして、中川酒造さんの特徴がこの仕込み水。写真を見てください。「水色」に見えませんか?そう、中川酒造さんが使っている仕込み水は水色なんです!!汲み上げた水そのままの色ですが、ミネラルなどを含んで自然とこんな色になるんだそう。写真だとわかりにくいかも知れませんが本当に綺麗な水色でしたよ!
そして酒蔵見学ではお馴染み(?)の試飲の時間がもありました!私は車で来ていたので飲めませんでしたが、皆さん飲み比べて楽しんでいましたよ!こだわりを聞いてから飲むお酒は、また一段と美味しく感じますね!
湧水が豊富な三島地域脇野町。中川酒造さんのすぐ近くには「まるや君が代」さんが。ここは「縄文雪つららの水」という湧水が有名だそうで、一般のかたが何人もペットボトルに水をくみに来ていました。
②三島地域「寛益寺・曽我禅師坊の墓」
続いてバスに揺られつつ次の目的地・寛益寺にやってきました。とても静かな集落にあるお寺で歴史を感じます。このお寺は719年平安時代に行基によって開基された古い古いお寺なのです。
古くから信仰を集めるお寺であの「上杉謙信」も祈願に来たそうです。そして、金剛力士像を安置した山門である仁王門、本尊の薬師如来立像をはじめ、 四天王立像や十二神将立像など指定文化財になっている立像がたくさん所蔵されていることで、お寺好きの中では知られるお寺だそうです。
しかし、今回はその指定文化財には目もくれず…(笑)ここでは「曽我禅師坊」のお話を聞きました。鎌倉時代初期に起きた曾我兄弟の仇討ちを題材にした「曽我物語」という軍記に出てくる曽我兄弟の三男坊が禅師坊。歌舞伎の有名な演目だそうですが、私は全然分からず……しかしマニアックでいいなぁと思いました。
本堂の裏の森のなかにかる墓地の一角に曽我禅師坊のお墓がひっそりとありました。古来の物語が今も地域に生きている、というのは良いですね。語り部が途切れないよう語り継いでほしいものです。
③三島地域「逆谷集落の散策」
続いて寛益寺の周辺でこの地域のお話を聞きました。風の音と鳥の鳴き声しかしない静かな集落。のどかな雰囲気にどこか昔にタイムスリップしてきたような気分でした。人の声も車の音も音楽も何もない、自然だけの音でした。
そして、「幻のバス路線」を通って和島地域を目指します。
三島と和島を結ぶ「幻のバス路線」はかつては大河ドラマにもなった与板城城主・直江兼続がココを通って上杉謙信・景勝の居城・春日山城に行ったとも言われる重要な道です。「逆谷(さかさだに)」と呼ばれる三島と和島を結ぶこの道と、与板を結ぶバス路線を通そうと小熊津右エ門さんが取り組んだそうですが、天災もあり逆谷を通るには至らず幻に立ち消えた構想だったそう。
しかし、古来から人が往来していた逆谷では、恐ろしい「マムシ池」の伝説や、行商人が運ぶ魚を「おいてけーおいてけー」と何者かが声をかける置いてけ伝説などさまざまな逸話があるそうです。
④和島地域「妙法寺」(昼食)
そんな幻のバス路線をバスで通って昼食会場の「妙法寺」にやってきました。
妙法寺は日蓮宗のお寺で700年の歴史を持ています。ここ和島の妙法寺が北越布教の中心地となっていたそうです。
ボランティアガイドさんの案内を受けながら本堂へと向かいます。途中の赤門は文化財にもなっていて仁王像がすごいようですが、今回はなんとスズメバチの巣が屋根の下にできてしまったそうで近づけませんでした!残念!
本堂の中はきらびやか!地域の人たちに支えられながら今も立派なお寺が維持されています。
ここでおまちかねのお昼ご飯です!今回は地元のお母様方が作ってくれました精進料理をいただきます。
精進料理といってもお肉や魚がないだけで豪華!!山の幸たっぷりでとても美味しかったです。
⑤和島地域「池浦酒造」
お腹いっぱいになった午後は再び酒蔵を見学。今度は和島の池浦酒造さんです。
和島も三島と同じく湧水が豊富な所で「四千人しかいないのに酒蔵が2軒ある。酒好きだからだ」と言われるそうですが、水がいいところでは酒造りも盛んになるようです。
ここでも酒蔵見学を。池浦酒造の代表銘柄は「和楽互尊(わらくごそん)」。良寛の里の酒というキャッチコピーでも売り出しています。ちなみに酒造りに「納豆菌」はご法度だそう!だから杜氏さん達は納豆食べないんですって!!
もちろんここでも試飲!皆さん口々に美味しい美味しい言っていて羨ましかったです。そしてバスの中が酒の匂いで充満し宴会帰りのようでした(笑)
⑥和島地域「井戸神様」
そして眼病に効くという「井戸神」の霊泉へ。軟水をみんなで試しのみ。同じ地域でも水の味が湧水によって違うそうでそれぞれに物語があるそうです。
⑦和島地域「住雲園」
最後にやってきたのは「住雲園」。
ここは、江戸時代の享保2年(1717年)に久須美六郎左衛門政信が造園を手がけたと言われる庭園で、北越の名園の一つとして、多くの文人墨客が訪れたそうです。旧越後鉄道(現在のJR越後線)の創始者・久須美父子の邸宅にもなっており、その後持ち主が変わり昭和47年に長岡市に寄贈されました。
泉石・庭石・樹木の配置は素晴らしいと言われ、樹間に弥彦山を望むことができるそう。平石が多いのが特徴的なお庭なんだそう。
現代のせわしない日常からふっと抜けだせる、まったりとした空気が流れていました。
おわり
さて湧水と幻のバス路線で結んだ三島と和島の物語。歴史ある2地域の逆谷を通じた歴史が少し垣間見えてきました。両地域は何となくゆったりとした時間が流れる古い地域だなぁという印象。ツアー参加者が「昔話の世界みたい」と言っていましたがどこかタイムスリップしたような雰囲気を味わうことができました。越後長岡まちめぐりの中でも個人的に一番ツアー参加者以外の人に出会わなかった旅だった気が。そのせいか独特の世界観を味わうことができました。
越後長岡まちめぐりは、「越後長岡・まちめぐり実行委員会」さんが企画運営されています。参加したいという方や気になる方は越後長岡・まちめぐり実行委員会さんの情報をチェックしてみてください!
この記事のライター 唐澤頼充(ライター/編集者)
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