この記事のライター 唐澤頼充(ライター/リサーチャー)
9月24日に長岡地域で行われたまちめぐりイベントに参加してきました。「越後長岡・まちめぐり」というタイトルで、長岡地域の2つの地域を何かしらの共通点で結び、それに関わる場所を巡るバスツアーです。この日は「水が育んだなりわい文化を訪ねる旅」として「小国」と「越路」の2つの地域を周ります。
この日のスケジュールは以下のとおり午前中に小国を、午後からは越路というものです。
- 集合8:30
- 【午前】小国地域「天神山の岩清水、芸術村」~「小国和紙生産組合」~「山口庭園」~「千谷沢分館でお昼」
- 【午後】越路地域「長谷川邸」~「越路原」~「朝日酒造見学」
- 解散16:00
長岡市幸町からバスでまずは小国支所を目指します。
道中には小国、越路のそれぞれの地域についてボランティアガイドさんから説明を受けながらの旅となりました。郷土愛溢れる方々からの語りは聴きごたえ抜群です!
小国町は長岡に合併される前は刈羽郡の町でした。中央部には盆地が開けていて、独自の文化や伝統が発展した地域です。越路町は小国町から流れる渋海川と街道の通り道、名前の通り「越の路」という細長い地域です。
①小国「天神山の岩清水」・「芸術村」
まずやってきたのは「天神山の岩清水」。太古から湧き出る清水で、農業用水や飲料水などとして使われてきた清水です。澄んだ雑味のない水質の良さが人気で、小国町内はもちろん急長岡市や柏崎など周辺各地から水を汲みに来るそうです。
「そんなに人気なのか~」と説明を聞いていたら、その途中に水を汲みに来た一般の人がやってきました。若い男性の方で近くの福祉施設で働いているそう「農業用のぼかし肥料を作るのに、この清水を汲みに来ました。やっぱり他の水で作るのとは違います」とのこと。それ以外にもお茶やコーヒー、料理などに使っている人も多いそうです。
この清水は小国の「山野田集落」の方々の生活用水だったのですが、山野田集落は2004年の中越地震で甚大な被害を受け、全世帯が移転し、今は誰も住んでいません。もともと過疎化の進んだ集落で、空き家が増えた頃にアーティスト・イン・レジデンス事業に取り組んだ先駆けのような地域だったそうです。山野田集落は一時は日本中の芸術家が移住してきて芸術家の多い村になったそうです。今は小国芸術村会館が営業するのみで、人の住んでいない集落になりました。
②小国「小国和紙生産組合」
続いて向かったのは「小国和紙生産組合」。小国地域では昔、農作業ができない冬の間に農家が副業として和紙づくりが盛んに行われていました。雪を利用した独特の技法は国の無形文化財記録選択、県の無形分解剤に指定されている伝統技術です。
小国和紙生産組合さんは、消えつつあった小国和紙を後世に残す目的で1984年に設立された組織です。現在は10名の人が働いていて、「久保田」などの酒ビンに貼るラベル、着物用の札紙などを生産しています。春から秋には原料のコウゾの栽培、冬は小国紙や雪晒しなど伝統的な紙づくりを今も実践。その伝統技術を守っているのです。
小国和紙生産組合さんは紙漉き場だけでなく、「小国和紙の店」というショップも運営されていて、こちらにも寄りました。素敵な和紙の製品が沢山!
こちらのドレスは和紙でできたドレス!実際に組合の職員さんの結婚式で使われたものだそうですよ!
かつて、この小国和紙を生産していたうちの多くは、先ほど廃村になった集落として紹介した「山野田集落」だったそうです。例え集落は無くなってしまっても、こうして伝統産業や記憶が残り続けるのは大切なことだなぁと思いました。
③小国「山口庭園・資料館」
続いてやってきたのは、「山口庭園」。ここは奨学金の「公益財団法人山口育英奨学会」の本部でもあります。
資料館「敬山閣」には小国の豪農・山口家の歩みが展示されていました。私はこの山口さんのことは全然知らなかったんですが、ちょっとスケールのでかさにびっくりしました。
まず、「日本石油」の創業者。今で言うとエネオスとかの新日本石油㈱の前進です。日本のエネルギーを牛耳る会社のトップが小国の山口家だったというのです!「まさかこんな山奥にそんなスゴイ一族が!」と度肝を抜かれました。
割りと皆さん平気で説明聞かれてましたけどスゴイことだと一人でびっくり。石油もそうですし、東北電力の大元になった電力会社は「山口権三郎の個人事業」とか書いてあったり、長岡銀行という銀行事業をやっていたりと、ちょっとスケールがでかすぎでびっくりでした。
この山口家の情報はネットにも全然出てない(ような気がする)し、実はこんなスゴイ偉人が生まれた土地なのだということをもっと大々的にPRしてもいいのになぁと思いました。みんな知っているんですかね?
④小国「千谷沢分館でお昼ごはん」
続いてやってきたのは「チャーザー村」でお馴染み「千谷沢村」の旧小学校後です。 落語家の林家こん平さんが笑点で「チャーザー村、チャーザー村」と呼んでいたのがこの千谷沢村なんですね。
ここでは、地域のおばあちゃんたちが作ってくれた郷土料理を堪能。
メインの料理もボリューム満点ですが・・・
なんとお惣菜のバイキングまで!!
お惣菜バイキングは大人気でした。
ボリューム満点でもう食べられない・・・と思っていたら
さらに
おみやげまで貰ってしまいました!まさに至れりつくせりです。
⑤越路「長谷川邸」
お腹がいっぱいになりつつも、午後からは越路地域に入ります。まずやってきたのは「長谷川邸」。江戸時代の初め頃に武士の出身といわれる長谷川家が、ここ塚野山に居を構えたそうです。以来山村地主としての地位を固め、代々庄屋を勤めてきました。街道沿いの馬宿として栄えたそうです。
1716年に再建されたと伝えられ、県内最古の豪農の館だそうですよ。
その姿は・・・
なんと茅葺き屋根の工事中!ちょっとがっかりした私は参加者の方々に「工事中で残念ですね~」と話しかけると「何言ってんのよ!工事している姿の方が珍しいんだから見れてラッキーよ!後日来たらちゃんとしたのしか見れないじゃない!」とのこと。なんというポティブシンキング!
建物の中はとても立派な日本家屋。広い土間からさまざまな部屋からいろいろ案内してもらいました。これだけ大きな日本家屋はやはり保存も大変なようでその辺りの苦労話も聞くことができました。
中庭もすごく立派!まるでタイムスリップしてきたかのような空間でした。
中庭から見ると母屋もビニールシートもなく茅葺屋根の雄大な姿!やっぱり私は工事中じゃないほうがいいな!
この長谷川邸は1995年の映画「藏」でロケ地にもなったそう。雰囲気出ていますもの。なんだかすごく空気感のよい空間でした。
⑥越路「越路原」
続いてはバスで越路原をドライブ。解説を受けながら南長岡ガス田の越路原プラント、宝徳山稲荷大社などをバスの窓越しに眺めました。片貝花火の絶景スポットや、工場夜景のビュースポットなどの裏話も聞け満足。越路原の稲とそばを見渡しながらのドライブは気持ちが良かったです。
⑦越路「朝日酒造」
最後にやってきたのは日本酒「久保田」「朝日山」でお馴染みの「朝日酒造」さん。
もみじ園を通り抜けて、「宝水」と呼ばれる朝日神社の湧き水を堪能。朝日酒造の仕込み水はこの宝水を使っているんですって。
続いてコンクリートの大きな建物がならぶ朝日酒造の酒蔵見学。
朝日酒造さんの思いを聞きながら酒造りの工程を一部見せてもらいました。その後はお隣の酒蔵の里にてお買い物。
酒蔵の里には「小国和紙生産組合」さんが作った和紙ドレスが展示されていました。朝日酒造さんのお酒ラベルは小国和紙生産組合さんが提供しているものもあるんですよ。
おわり
と、小国、越路という2つの地域を1日で回りきりました!
まず、バスツアーに参加したのは中学校の修学旅行ぶり位なのですが、いろいろな解説が聞けるし、参加者同士で新しい知り合いができるしいいですね。最近は自家用車で観光地を周る方も多いかと思いますが、地元主催のバスツアーは思わぬ知識が得られて大変有意義ですよ。
そして何と言ってもメジャーな観光地ではなくテーマに沿いつつも地元の人が「これは見て欲しい」という場所をまわれたのは良かったです。今回は「水が育んだなりわい文化」というテーマでしたが、そういう一つの軸で地域を見ると今まで見えなかった部分が見れて面白く学びのある1日になりました!
越後長岡まちめぐりは、「越後長岡・まちめぐり実行委員会」さんが企画運営されています。参加したいという方や気になる方は越後長岡・まちめぐり実行委員会さんの情報をチェックしてみてください!
- 公式facebookページ:https://www.facebook.com/pages/%E8%B6%8A%E5%BE%8C%E9%95%B7%E5%B2%A1%E3%81%BE%E3%81%A1%E3%82%81%E3%81%90%E3%82%8A2014/694356533975334
- コライト団体ページ:http://nkyod.org/group-list/machimeguri
この記事のライター 唐澤頼充(ライター/リサーチャー)
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