思い出の風景は今。真砂草原に久しぶりに行って来た

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この記事のライター 北 三百輝(きた さんびゃっき)

新潟市西区真砂(まさご)には私の母校である真砂小学校がある。この小学校の裏手ある草原が通称「真砂草原」。小学生時代にはよくこの草原に行って探検ごっこをして遊んだものだ。

真砂小学校のグラウンドの端に草原への「玄関」があった。この玄関は鉄製の柵の扉で、開閉は自由にできたので私たち小学生は好きなときに自由に出入りすることができた。玄関を出ると手つかずの草原が広がっていて私たちの格好の遊び場だった。

草原の中央には通称スモーキーマウンテンと呼ばれる(そう呼んでいたのは私だけかもしれないが)ゴミを埋め立てたような小山が隆起していて、私たちは駆け足で山を登ったり降りたりして遊んでいた。その山の頂上から海の方角を見ると、丁度真後ろが真砂小学校のグラウンドになる。2時の方向には青山霊園の観音菩薩が草原の中にぽつんと立っており、10時の方向には松海が丘四丁目の住宅があった。

さてそんな記憶の中の真砂草原と現在の真砂草原を比較してみる旅に出てみよう。ゴールデンウィークの真っ只中、5月4日に私は自宅から歩いて真砂草原へと向かった。

私の家からだと真砂草原に到達するまでに松海が丘三丁目を通ることになる。ちなみに松海が丘四丁目は松海が丘三丁目から更に海の方へと歩を進めたところにある。松海が丘四丁目は松林と草原と海岸道路に囲まれており、他の町内と隣接していない。実際に歩いてみればなお明確だが草原と砂丘の中にこの集落だけ孤立したようにして存在している。集落内には一般住宅の他、サーフ・ショップや美容室もある。

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松海が丘三丁目から松海が丘四丁目へと向かう道

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松海が丘四丁目。住宅街から浜までほんのわずかな距離

ところで地図を見て欲しい。

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松海が丘三丁目から松海が丘四丁目に向かうための一本道を地図から見て取れるだろうか。この道路の右側が真砂草原、左側が松林になっている。なお左側の松林は以前は鬱蒼としていて暗い印象だったが現在は手入れが行き届いていて木漏れ日がよく差し込む明るい林になっていた。

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「松海の森」というボランティア団体が松林の手入れをしているとのこと。林道も整備されていて散歩しながら森林浴をすることができる。ここが海にほど近い地区であることを忘れてしまう。

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さて松林の中で安らぐのが今回の旅の目的ではない。道路右側の真砂草原へと向かう。松海が丘四丁目に隣接する形で立地する駐車場の脇から真砂草原内に侵入するための小道があったはずだが、現在は草の丈が高くなっており歩いていけるような道が塞がれてしまっていた。

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本来ならば、というか私の記憶では、ここから小道を抜けて行くと右手にアーチェリー練習場があり、さらに進むと草原中央部に出ることができるはずなのだ。戸惑いつつ一旦駐車場から出て海を背にして来た道を引き返した。すると数歩も歩かない内に何やら新しい入口らしき場所を発見。

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チェーンをまたいで草原内部に侵入。少し進んでみて様子がおかしいことに気づいた。真砂草原が無い!

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馬鹿な。小学生の頃よく遊んだ思い出の場所が本当に思い出だけの場所になってしまったというのか。

この計算づくの整った碁盤目の植林用の土地は何だ?あの手つかずの藪と草原はどこに行った?スモーキーマウンテンは?無い。どこを見渡しても真砂草原にしては見通しが良すぎる。

その不自然さに衝撃を受けつつ真砂小学校のグラウンドの前まで来た。

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開閉式の鉄製の扉は撤去され、代わりに野球ボールを防ぐためのネットが張られていた。ネットをくぐってグラウンドの側に立って海の方を見てみた。

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やはり真砂草原は無くなってしまったのか。遠くの砂丘まで何の障害もなく見通すことができてしまった。

でもまだ少しは残っているかも知れない。とりあえず海のほうまで歩いてみることにした。植林区画が終わる辺りでようやく草木を発見。

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植林区画から外れたところでは昔のままの真砂草原が生き残っていた。涙が出そうになる。

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写真左手が植林区画、右手が残存草原

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これが真砂草原?ベルリンの壁だ

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生き残っていた真砂草原

本当に残りわずかではあったが開発を免れた生き残りが見せる真砂草原魂に心を打たれた。

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これぞ真砂草原

さらに進んで海を見渡そうとすると赤錆の門が現れた。

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一旦引き返してから観音菩薩の方向へ。なんと霊園前がアスファルトの駐車場になっていた。

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しばらく行かないでいた内に大きくその姿を変えてしまった真砂草原。最後に足を踏み入れたのはいつだったろう。たぶん7、8年は行っていなかったと思う。

追憶の旅、懐かしのスポットに行って「あ~ここ、ここ!」という体験をしたかったのに思ってもいない結果となってしまった。防砂・防風のための保安林を植林するという生活上の利益のために手つかずの荒れ地は奇麗に整備するに超したことはない。むしろそのままにしていると不法投棄などの犯罪の温床になってしまう。

そう、それは分かっている。しかし一方で思い出の風景を壊されたという気持ちも確かにある。言って見れば「現在・未来の生活者の生活上の利益」と「過去の生活者のロマン」の対立だ。しかし今こうやって対比してみてと笑いがこみ上げてきた。「過去の生活者のロマン」に勝ち目があるわけがない。

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不法投棄された家電製品

せめて植林された松が立派に育って「真砂草原跡地」で森林浴ができるようになればいいなと思う。

スポット情報

真砂小学校

  • 新潟市西区真砂3-24-1
  • 025-267-1850
  • ※真砂草原は真砂小学校グラウンドに隣接しています。

ライター 北 三百輝(きた さんびゃっき)

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※本記事の内容は取材・投稿時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報につきましては直接取材先へご確認ください。