この記事のライター 竹谷純平(ライター/Webライター)
新潟市中央区下本町商店街。「下本町」「フレッシュ本町」と呼ばれる一帯です。
何度かその下本町に足を運ぶ機会がありまして、いろいろな角度から取材をしています。食であったり、歴史であったり。
商店街を歩くたび、無性にこちらの店が気になっていました。「なじらね」。
こちらです。どうやら、交流スペースの模様です。
中ではいつも何かしらの会合が催されており、好奇心をそそられていました。人の集まるところにはいいネタがあるのではないか!ということで。
この日も何かの集まりが。簡単に挨拶をさせて頂き、どのようなお店なのか質問。
「『地域の茶の間』って言って、誰でも気軽に来て、お茶しながら交流しましょうというね。そういうところですね。あなたがたも座ってゆっくりお茶でも飲んで行きなさいよ」
なんと、急遽インタビューをさせて頂けることになりました!
下本町の高齢化率は32%!
(キョロキョロと店内を見ていると)
「去年まではね、ここは衣料品店だったんですよ。そこが閉店するということで、空き店舗がひとつ出来たんです。ちょっと名残があるかな?」
店内を見まわす私たちにこう切り出したのは、「NPO法人 尊厳の会」理事長の庄司和義さん(写真右)。左は、大家の笹川さん。
庄司氏:
「下本町は、高齢化率が32%。新潟市では、山の下地区とともに、最も高齢化率が高いエリアなのです。ちなみに、『高齢者の率が20%以上』で『高齢化』というのだから、32%となると、もはや『超高齢化』です。ですから、通常の高齢化が進行している地域よりも、いろいろな課題が山積している地域なんですよ」
わたし(以下、『竹』):
なんと!たしかに高齢者の方は多いですが、32%とは知りませんでした…。そこまででしたか。
庄司氏:
「そういう地域ですから、『町内会』『老人会』などの既存の組織が機能しにくいという声があります。集まれる機会が少ないとなると、お年寄りが相互にコミュニケーションしづらい、と。」
「そんな中で、ちょうどこちらのような空き店舗を改装して、何かしらの新しいサービスを下本町で始めようという動きが出てきたんです。ちょうど私は、若いころこの辺りの学校に通っていたこともあり、『地域のみなさんが集まりやすく、自然とふれあいが生まれる場所を下本町に作りたい』という思いを持っていました。そして、このたび赤い羽根助成金を頂き『地域の茶の間』ということで、今年の6月23日に開所しました」
竹:
「地域の茶の間」ですか。
庄司氏:
「正式名称でいうと『地域の茶の間 ふれあいホール なじらね』ですね。『なじらね』って、わかるでしょ?新潟の人だよね?」
竹:
わかります!「ご機嫌いかがですか」というような意味ですよね?
庄司氏:
「そう!新潟の人にはピンときてもらえるかな(笑)そうそう、こちらの方は、場所を貸して頂いているオーナーの笹川さんです。『場所を探している』と言ったら、快く貸して頂けて。しかも週何日かお手伝いをして下さっています。84歳なんだよ!すごいでしょう!」
笹川氏:
「82らよ!」
庄司氏:
「あれ!大変失礼(笑)!」
竹:
「(笑)。いや、いずれにしてもお若いですね!ずっとアクティブに動いていらっしゃいますし!」
笹川氏:
「衣料品店をやる前は、毛糸屋をやっていましてね。昔はほら、とても需要があったものだから。」
竹:
最近、この一帯の歴史を調べていまして、昔の写真を拝見しました。とても商店が多かったようですね。
笹川氏:
「そうそう。君たちが生まれるはるか前から、新潟港ってのは流通がすごかったからね。この辺のお店もほら、だいぶ賑わっていたんだよ。ただ、時代の流れというのには逆らえないものでね、ご覧のように、今ではシャッターがだいぶ降りちゃっているよね。」
竹:
昔の栄えていた頃と比べると、寂しいですね…。時代の流れは仕方がないとはいえ。でも、お店がこうして再利用されるというのは嬉しいのではないでしょうか。
笹川氏:
「そりゃそうだよ!ここでいろんな人が交流してくれるっていうのは嬉しいもんですよ」
庄司氏:
「そうなんですよ。だから、私は大感謝しているわけですよ!」
お茶でも飲みながら、趣味の共有を
庄司氏:
「ここの目的としては、お茶でも飲みながら一緒に食事したり、趣味を共有してもらったりしてほしいと。そういう目的で開いたんです。1日利用で50円、1ヶ月だと500円。イベントを企画して開催してもらってもいいし、どんなことをしても構いませんよ、と。どんどん地域で交流を深めて頂きたいなと思っているんです」
「無縁社会」と呼ばれる社会。NPOだからこそできることを
庄司氏:
「また、私はここでの活動とは別に、民生委員・児童委員を10数年やっております。それで、業務の中で様々な会議だとか研修に参加したり、社会福祉機関と関わるわけです。そうした中で、『制度はあるものの、《無縁社会》という言葉が出てきたように、本当に身寄りのないお年寄りが存在する』ことを痛感させられました。例えば、面倒を見てくれるような子供のいない、本当に一人になってしまったお年寄りをケアするような仕組みというのは、無いに等しいのではないかと。『亡くなったらどうなるのか』という不安をお持ちのお年寄りが大変多く存在するのです」
「そういう不安を抱えたまま認知症になってしまえば、どうしようもなくなります。そうなる前に、そういった方々に生前契約や任意後見契約といった制度をご紹介する、といった活動も、『なじらね』と同時並行で行っています」
竹:
「生前契約」。東京などではよく聞きます。
庄司氏:
「新潟ではまだまだ周知されていないものです。しかも、こうしたものは行政ではなかなかサポートしにくい制度なのです。そこを、我々NPOが支えていきたいという思いです」
若者と高齢者の交流も実現できれば
お話が進む中、様々な肩書きの名刺を出す庄司理事長。気になったので聞いてみます。
竹:
アレレ!たくさん名刺をお持ちですね。民生委員の他にも、放送大学の学生指導員の肩書きもありますね。
庄司氏:
「そうそう。放送大学もそうですし、他にも学校組織と関わるような仕事をいくつかしています。その業務の中で、若い人たちと関わることが必然的に多くなるわけです。若い方との交流の面も力を入れていきたいと考えています。すぐそこ(古町)には専門学校などが多くあります。ということは、『若者が居ない町』ということにはならない。ゆくゆくは下本町で下宿してもらったり、高齢者と交流してもらったり…ということが町全体の活動としてできればと考えています」
竹:
たしかに、「いきなり若者の定住者を増やして人口を増やす」というのは難しいとは私も思います。こうした施設で高齢者の方々と交流するといのは面白そうですね。私たち若者は、ご高齢の方と触れ合う機会といのは年々、少なくなってきている気はします。
庄司氏:
「若者と交流したい高齢者はたくさんいますからね。ぜひ、やりたいところです」
最後にひとこと
竹:
最後に一言、頂けるでしょうか。
庄司氏:
「にいがたレポさんをご覧になるのは、若い方が多いと思いのかな?少しでも気になった方がいれば、『おじいちゃんおばあちゃん、こんなところがあるんだって!』などと紹介してもらえたら嬉しいですね」
竹:
お忙しいところ、お時間を頂きありがとうございました!
まとめ
下本町商店街を散策している中で、なんとなく気になって入った「なじらね」さん。
単なる交流施設かと思いきや(失礼!)、施設運営に留まらず、熱い想いを持った理事長がいらっしゃいました。
また、「空き店舗の再利用」という、個人的に気になっていた試みが実際に進行しているところを見られたも面白かったです。衣料品店を営まれていた笹川さんが活き活きとお店を手伝っていらしたのが印象的でした。
「若者と高齢者が触れ合う空間」が増えていくと、高齢者の方の知識や技術を若者に継承する、といった動きが自然に出てくるのではないかと思うので、世代間交流の突破口のひとつになれば面白いと思いました。
スポット情報
地域の茶の間 ふれあいホール なじらね
- 住所:新潟市中央区本町通12番町2760
この記事のライター 竹谷純平(ライター/Webライター)
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