この記事のライター:北 三百輝(きた さんびゃっき)
2014年7月23日、突如としてタワーレコード渋谷店、新宿店及びタワーレコードオンラインで“婦人倶楽部”という謎の音楽ユニットのCDの販売が始まった。詳しくはこちらをご覧いただきたい。
コアなポップシーンの最後の切り札「カメラ=万年筆」の佐藤望が新たなユニットをプロデュース!プロデュース作品第1弾は佐渡ヶ島に暮らす主婦たちが巻き起こすポップアート!知る人ぞ知る、非実存的アート集団、婦人倶楽部の最先端おしゃれアルバム『FUJIN CLUB』
「婦人倶楽部」は架空の婦人アイドルと噂され、普段は佐渡の山奥にて慎ましやかに生活中。3月の結成後すぐに無謀ともいえる台湾ライブを敢行し、デモの渦中である若者の熱い声援を受け華々しいデビューを飾り、密かな話題となっていました。”
何?佐渡?これはぜひ話を聞いてみたい!ということで佐渡在住の筆者は取材を決意した。
ほどなくユニットのプロデューサーである佐藤望氏のTwitterアカウントを発見。にいがたレポの紹介とともに取材申し込みの依頼文を送ってみると…。
ご連絡ありがとうございます。
婦人倶楽部のプロデュースをしております佐藤望です。
この度は取材申し込みありがとうございます。
にいがたレポ拝見させていただきました。
ぜひ婦人倶楽部紹介していただく思いますので
よろしくお願いいたします。さて、取材にあたり注意点がありまして、、、
まず婦人倶楽部というユニットは
本当に佐渡の主婦たちがメンバーとして在籍しています。
ただし、普段はCDを出したりする生活とは無縁の人たちなので
顔出しや名前なども明かすことが出来ません。
今公表してるプロフィールは佐渡在住の婦人4人、ということだけです。
なので、婦人に対する取材はNGで、代わりに僕が対応いたします。
という返信をいただいた!取材OK!ダメもとだっただけに、これは嬉しい。
聞けば佐藤氏は2013年6月から1年間佐渡の南部地区で生活をしていて、そこで佐渡の祭りや芸能などの文化に触れ、様々な仲間とも出会い、その後島を去った。そこで佐渡での生活を記念するためにこの婦人倶楽部というユニットを立ち上げたのだと言う。
現在、佐藤氏は神奈川県在住。ということなので残念ながら直接お会いすることはできなかったがメールのやり取りで取材を受けてもらうことになった。では早速インタビューに移りたいと思う。
――今回は取材に応じていただきありがとうございます。いやー、それにしても婦人倶楽部、斬新ですねー。あの割烹着と佐渡に暮らす若いご婦人がたのミステリアスな雰囲気に飲み込まれてしまいました。あのスタイルはどのようにして思いついたのですか?
佐藤氏:そもそもは農作業を前面に出したものが濃厚でしたが、もっとざっくり色んなことが出来る町の婦人会みたいな感じがいいんじゃないかとやいやい話し合ってるうちに「婦人倶楽部」というポップな響きのユニット名を思いつき採用しました。古き良き~的な昭和スタイルを求めていたので、割烹着を着てもらいました。因みに、ボツになったユニット名は「そばっちゃ」です。昔いた柿のアイドル「カキッチュ」をもじったものです。
――なるほど、町の婦人会ですか。昭和な雰囲気満点ですね。ところでメンバーは4名のように見受けられますが、それぞれのお名前(芸名)を教えてもらえますか?確か婦人倶楽部のTwitterでは婦人Aとか婦人Bとかそれぞれ名称が設定されているようですが…。
佐藤氏:先にもお伝えしたとおり素性はあかせませんので、婦人A~D、それに笛吹きの黒子です。
――メンバーは皆佐渡で普通の主婦生活を送っているということですが、実際のところどうなのでしょう?
佐藤氏:誰がどうとは言えませんが、普段は柿仕事をしたり、お米作り、草履作りなどをして過ごしています。基本的には主婦です。
――あくまでも主婦だということですね。しかし柿や米、草履ですか。ただの主婦ではありませんね。今回発売になったCD「FUJIN CLUB 」のジャケットには川島小鳥氏撮影のアイスを頬張るおカッパ頭の女性が写っていますが、この女性は婦人倶楽部のメンバーの一人なんですか?
佐藤氏:ジャケットの女の子は台湾の高校生です。婦人倶楽部のメンバーではありません。この子に関しては、そのうち明らかになることがありますが、現時点では秘密です。
――ほほう、そのうちに、ですか。楽しみです。では婦人倶楽部の音楽についてお聞きします。作詞作曲はどなたで、ボーカルは誰がやっているのかお聞かせください。
佐藤氏:作詞作曲は私、佐藤望です。ボーカルは婦人B、婦人Dが担当しています。婦人A、婦人Cはコーディネーションや文弥人形を使ったダンスをします。
――婦人Bと婦人Dがボーカル担当だったんですね!それは分かりませんでした。彼女たちは音楽活動の経験があったんですか?
佐藤氏:僕も詳しくは知りませんが、歌は直す部分がないくらい非常に上手でした。
――それは嬉しい誤算でしたね。そもそも佐藤さんが婦人倶楽部を結成しようと思った際、婦人をはじめとするメンバーはどのようにして集めたのですか?先ほども少し触れましたが、アートワーク担当は「未来ちゃん」の川島小鳥氏となっていますね。全て佐渡つながりですか?
佐藤氏:メンバーは僕が佐渡に滞在していた際に出会った、さまざまな特技をもった婦人の方々です。結成の経緯は、かいつまんで言えば、台湾公演という名の海外旅行に行きたかった人たちの集まりということです。川島小鳥さんへのオファーは、佐渡の女の子を撮った写真集「未来ちゃん」を知っていたのでこれは婦人倶楽部にピッタリだということで、無理を言ってお願いいたしました。
――楽しそうですね。そういえば佐藤さんはどうして佐渡に来たんですか?
佐藤氏:山手線の広告で「佐渡へおいでよ」と書いてあったので、来ました。もともと音楽関係の会社で働いていたのですが、仕事を辞めて静かに音楽制作をしたいと思っていたところだったので、直感を信じて生活を佐渡へ移しました。佐渡の印象は、とにかく広い、ということですね。一日で歩いて回れるぐらいの大きさだと思っていたので最初南部の山奥に訪れた際、修行だな、と確信しました。
――電車内の広告がきっかけですか。決断力ありますね~。修行だなと思ったというのは最初はいろいろと苦労なされたということですか?
佐藤氏:私は神奈川生まれで身近に海や山もありましたが、同時にコンビニなど便利なお店もたくさんありましたから、本当に何もない田舎というのをダイレクトに体験して正直カルチャーショックを受けました。来島後すぐに、柿の摘蕾の仕事を始め、初めての農作業初日はめまいや疲れで柿の木の幻覚を見るぐらいの状態でした。1日8時間エアコンのきいた部屋でパソコンに向かう仕事から、炎天下のなか朝から晩まで柿の摘蕾をするという正反対の仕事ですから、それは本当に大変でした。ただ、自然の中に身をおくことでそれまで聞こえなかった鳥の声や木々のざわめきが感じ取れるようになり、そのことは音楽制作にとても影響しました。パソコンで作る音楽の中にも、自然の営みや柔和性みたいなものを求めるようになりました。
――田舎で生活してみて初めて聞こえてくる音があったんですね。現在私も佐渡在住なのですが、なんだか小木や羽茂方面が賑わっているなという印象がうっすらと感じられます。6月に羽茂にある旧川茂小学校体育館でハロー!ブックスライブというイベントがありましたが佐藤さんもそれに携わっていたのですか?
佐藤氏:ハローブックスでは、校内放送の運営と、ハローブックスライブの舞台監督をしておりました。普段アミューズメント佐渡(佐渡市内の多目的ホール、佐渡中央文化会館)で音響の仕事をたまにしていたので、ちょうど呼ばれた形です。
――やはりそうでしたか。ユニークなイベントですよね。ところで話を婦人倶楽部に戻しますが、今回のPVは台湾で撮影したんですよね。これは先ほどの台湾公演のお話とつながってますか?
佐藤氏:まさにつながってまして、結成の経緯になった台湾公演を兼ねた旅行中に動画を撮りためて編集しました。旅行のしばりとして、普通に街を出歩く際も割烹着を着て行動してもらいました。
――台湾の街をあの割烹着姿で闊歩する婦人4人組の姿はぜひ生で見てみたかったです。では婦人倶楽部の今後の予定についてお聞かせください。
佐藤氏:婦人倶楽部の活動のメインは、普段の佐渡での暮らしです。「婦人倶楽部」というコンセプトのポップさは、日本的な情緒残る田舎から発信される実際の生活が、昨今のロハスブームや健康志向みたいなファッション的なものではなく本来の意味で充実した人間的な暮らしなんだ、と若い人に示すことにあります。今回のリリースは、田舎のおばちゃんでもオシャレなこと出来るのよ?っていう提言ですね。ライブ活動やアルバム制作などは今のところ予定はありませんが、婦人は気まぐれなので、どうなることかは私にもわかりません。
――含蓄のある話ですね。単に有機野菜やトレーサビリティを志向するだけではなく、地域の暮らしや文化・伝統を保持して地域の自立を目指すスローフード的な価値観こそが重要だということなんでしょうか。そういえば佐藤さんは現在島外で暮らしていますが、婦人倶楽部のメンバーとはどうやって連絡をとっているんですか?
佐藤氏:全体の連絡はFacebookです。個人とは普通にメールや電話をします。
――佐藤さんは佐渡に戻ってくる予定はあるんですか?
佐藤氏:佐渡は第二のふるさとだと思っているので東京での活動が落ち着いたらいつでも来島したいです。
――ぜひまた佐渡に来てください。貴重なお時間をいただきありがとうございました。これで少しは婦人倶楽部のことが分かってきたような気がします。佐渡から世界に向けて発信していくことの面白さを実感いたしました。最後に何か一言ありましたらお願いします。
佐藤氏:ナスが沢山とれて食べようがない、、、とお困りの方。ジャムにするとリンゴのような甘みでとても美味しいので、ぜひ。
――まさに佐渡の婦人らしい(?)一言でした。ありがとうございました。
佐藤氏へのインタビューが終わった。
“佐渡発世界”をまた一つ増やしてくれた婦人倶楽部の世界観には、企業の広告と満員電車に揺さぶられる都市生活へのアンチテーゼが根底に流れているような気がした。それは佐藤氏が都会から佐渡の田舎へ単身飛び込んでいったときに感じたことなのかも知れない。最初は修行と思えた佐渡の暮らしも数々の出会いを経て第二の故郷と呼べるほど彼にとってかけがえのないものになった。これほどまでに人の人生に大きな影響を及ぼす島が新潟県にはある。2014年、婦人倶楽部が佐渡から世界へ割烹着を来てはばたこうとしている。
冒頭にもあるが今回の婦人倶楽部のCD「FUJIN CLUB 」の店頭販売はタワーレコードの渋谷店及び新宿店でしか行われていない。新潟県で婦人倶楽部のCDを入手するには下記のオンラインサイトを利用すると良い。
婦人倶楽部:http://fujinclub.jp
ライター:北 三百輝(きた さんびゃっき)
※本記事の内容は取材・投稿時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報につきましては直接取材先へご確認ください。