この記事のライター 竹谷純平(ライター)
「地図になるポストカード」「しかもバイリンガルになっていて、英語でも発信できる」…こうしたプロジェクトを行っている方々がいるとの情報が寄せられました。気になる。
調べたところ、市内の学生さんが、「下本町エリア」のまちおこしプロジェクトの一環として始めたプロジェクトとのこと。その展示が本町にて行われるということで、早速、現地に行って見てきました。
絵葉書×テクノロジー×デザインで「新潟の下町」の魅力を発信する
先日、下本町エリアで行われた「新潟下町物語 本町ナイトイルミネーション」というイベント。
にいがたレポでもその模様をお伝えしていましたが、そのイベントの一角に、なにやらスタイリッシュな場所が出現していました。周辺には外国人の姿もチラホラ。ある意味、本町らしからぬ異質な空間が(笑)
こちらです。
思い切って突撃してみると、運営スタッフの学生さん(新潟県立大学関谷研究室)が声をかけて下さいました。「実はこれ、そこに置いてあるポストカードの写真なんです。裏面のQRコードを読み取ると、スマホのでマッピングしてくれて、実際にその場に行くことが出来るんです!」と、イチから実に丁寧に、そして元気よく説明をしてくれました。さらに、隅々まで案内を。素晴らしいホスピタリティ。
「なかなかおシャンティーなスタイリッシュな空間ですねえ。」と聞いたところ、「so+ba」さんというデザインスタジオとのコラボレーション企画であるとのこと。通りがけの地元のおばあちゃんが「やいーっや。何らこれ?まーたハイカラなブテックができたもんだなあー」などと新潟弁全開でしゃべりかけてきて、コミュニケーションが発生していました。スタイリッシュと下町情緒が良い感じにミックスされていました(笑)。
夜になると、こんな感じに。かっこいい…!
コンセプトは下記の通り。
■コンセプト
新潟市は、開国5港のひとつに選ばれた日本屈指の港町。昔ながらの魅力を伝えるダウンタウンが下町(しもまち)エリアです。全長約300mのフレッシュ本町商店街では、今日も静かな時が流れ、人々の笑顔が行き交っています。この新潟下町は、市内でもっとも居住者の高齢化が進んでしまった地域のひとつ。町の活気を次世代に受け継ぎ、世界の高齢化地域のモデルとなる道が模索されてきました。ソーシャルメディアで、世界中の人たちとつながることができる時代です。でも私たちは、20年前よりもたくさんの時間や友だちを手に入れたでしょうか。本当の気持ちを、デジタル空間で共有できているでしょうか。瞬時に送信できるメッセージが、何かを置き去りにしてはいないでしょうか。そんな問いかけから、ひとつの地図のアイデアが生まれました。24種類の絵葉書の姿をした、あまり見かけないユニークな地図です。町の素顔を捉えたいくつもの瞬間が、あなたを町へと連れ出します。自分だけの地図を描き、ここ新潟下町で新しい旅を始めてください。(引用元:ポストカード説明書き)
…なるほど、確かに。ソーシャルメディアを日常から駆使している若い学生さんたちが、敢えて「ポストカード」という、アナログなツールを用いて地域の魅力を発信していくというのは面白いですね。
ポストカードの使い方
それでは、気になる使い方をご紹介。
このように、3枚組で1セット、全8種類になっています。
こちらはコンセプトシート。こちらもシンプルでスタイリッシュなデザイン。
バイリンガルということで、英語表記でもしっかりとした説明書きが。
こちらがポストカード。ビシッとポージングをキメている、こちらのイケメンがいるのは「曙公園」。
このQRコードを読み取ると、スマホの地図アプリと連動し、マッピングしてくれます。
こんな感じで表示されます。
各カードには、その写真が撮影された場所に関する情報が書かれています。本町名物(?)の猫から、人情味あふれる商店街の方たち、古い町並みなど…。「えっ、こんな所があったんだ」と思わせてくれるような写真もありました。もちろん、英語での説明書きも併記。
旧小澤邸ですね。
こういう写真、いいですねえ。
説明書きには、制作スタッフのみなさんの思いと、詳しい説明書きが書かれていますので、そちらもご紹介。
■使い方
一枚一枚の絵葉書が、見知らぬ場所や人々との出会いを誘います。
オンライン情報から短時間で見どころを回れる現代にあって、この絵葉書はあえて寄り道や無為の時間を楽しむスローツーリズムと、思いがけない人々とのふれあいを生み出すセレンディピティを提案しています。この絵葉書を手がかりに、自分の足で新潟下町を歩いて、お気に入りの場所や人を見つけてください。それぞれの絵葉書はオンラインと連動しています。裏面に印刷されたQRコードのGPS情報から撮影場所を割り出し、写真の現場を実際に訪ねてみることができます。新潟下町を歩いたら、今度はあなたが体験を共有する番です。旅の写真やテキストを、http://tiny.cc/Shimomachi に投稿してください。投稿は新しい絵葉書の素材として採用され、誰かを同じ場所へと導いてくれるかもしれません。使い終わった絵葉書は、新潟下町の新潟本町十三番郵便局から送り出しましょう。窓口ではオリジナルスタンプが捺印できます。国内なら52円、海外はどこでも70円。筋書きのない旅で、あなただけの特別な発見を教えてください。手書きの絵葉書には、デジタル時代の今だからこそ受け取った人の心に届く旅情が宿っています。
こちらにあるとおり、「セレンディピティ」、つまり「偶然の発見」というのが旅行や散策の醍醐味だと思います。自分が探していた物事よりも、偶然発見したことのほうが楽しかったりする…。オンラインでもセレンディピティ的な事は体験できますが、実際の体験に勝るものはないですよね。Google Map、Google Earthなどで「疑似体験旅行」ができる時代へのアンチテーゼ的な意味合いも見て取れました。あと、なんだかんだで「手書きの手紙」というのは貰って嬉しいですよね、単純に。
データの蓄積という面でも「下町の風景を未来に残す」
冒頭でもお伝えした通り、このプロジェクトを推進しているのは、新潟県立大学・関谷研究室のみなさんと、「so+ba design 」。
関谷先生によると、この「POSTCARD PROJECT」は、「未来に向けて地域のデータのストックをしていく」狙いもあるのだとか。デジタル・マッピングなどの技術を用いて使ってもらうことは、新しく人の流れを生み出す可能性ができるだけでなく、記憶をバーチャル空間でも残すことにつながります。デジタルの良いところは「情報を残す」「その情報を容易に引き出せる」というところにあると思うので、若い感性と織り交ぜて仕掛けていくのは面白い試みだと感じました。
「コンセプト」でも書かれている「町の活気を次世代に受け継ぎ、世界の高齢化地域のモデルとなる道を模索する」というのは個人的に「なるほど」と思いました。日本は世界的に見ても稀なスピードで高齢化が進んでいますが、それは同時に、「いかに地域の活気を引き継いでいくか」「いかに地域の魅力を発信していくか」を、世界に先行してチャレンジできる土壌があるということでもあるわけです。プロジェクトを取材させて頂いて、いろいろと気づかされました。
ちなみに、このポストカードは新潟駅、新潟空港、りゅーとぴあなど、新潟市内各地で無料配布中です。見かけたら是非、お手に取ってみて下さい。下町エリアは、歩いているだけでも新しい発見があって楽しいところなので、ポストカード片手にゆっくりとまち歩き…というのも良いかもしれません。
最後に、プロジェクトの紹介動画をご紹介。とてもかっこいい映像ですので、こちらも是非ご覧下さい!
プロジェクト詳細
- 企画・運営:新潟県立大学 関谷研究室×so+ba
- 公式Facebookページ:http://tiny.cc/Shimomachi
- 紹介動画:http://vimeo.com/108433474
- 配布箇所:新潟駅、新潟空港、りゅーとぴあ他
ライター 竹谷純平
※本記事の内容は取材・投稿時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報につきましては直接取材先へご確認ください。