この記事のライター 北 三百輝(きた さんびゃっき)
新潟駅南口で毎週日曜日午後1時半からサイファーをやっている集団がいるという情報をtwitter上でキャッチした。え?!新潟でもサイファーやってんの?!これはぜひ見てみたい!
ということで4月20日(日)、新潟駅南口に行ってみた。
(注:サイファーとはラッパーが輪になってフリースタイル(即興)でラップをすることです。)
午後1時くらいの駅南広場の様子。まだサイファーらしきことをやっている集団はいない。
時間になるまで広場の長椅子に腰をかけて待つことにした。今日はいい天気だ。でもここはいつもの見慣れた新潟駅南口の広場。何の変哲も無いこの場所で本当にサイファーをやるなんてことが可能なのだろうか。半信半疑になりながら定刻になるのを待つ。
1時20分ごろ、定刻の10分くらい前になるとB系の格好をした若いお兄ちゃんたちがエレベーターの脇で屯しだした。そこにマッシュルームカットでカジュアルにセットアップスーツを着こなした細身の青年が合流した。しばらくするとラップが聞こえてくるではないか!
こ、これは。
とうとう始まった新潟サイファー! ビートの音源はiPhone。みんなで輪になってストリートの即興ラップが始まった。
聞けばこれがまたもの凄く上手い!YouTubeとかに上がっている他県のサイファーと全く遜色がない。緊張と興奮でその様子を見ているとマッシュルームカットのモッズMCが私の顔を評して「ポーカーフェイス、何考えてるか分からない・・・」と挑発してきた!
思わず顔を歪めてしまう。彼は黒崎海斗、16歳。彼だって結構ポーカーフェイスじゃないか!それならば負けてられない、私も即興でカマしたいという欲求がフツフツと湧いて来た。
挑発に乗って私もサイファー。ラップで自己紹介。
「よう、ちょっとおれにも言わせろ、おれがにいがたレポのライター。この辺でやってるっていうサイファー、かなりやべえって聞いたから来たぞ、って対価、とか求めず書いた、おれが今30歳のオヤジラッパー、今なんかちょっとすげー場違いな感じ、でも今日ちょっと取材でもいいっすか?動画とか撮ってもいいっすか?そんな感じ、って問題ないっすか?」
みないな感じで(本当はもっと噛みまくりで)ラップで取材依頼。ほどなく了承を得ることができた。これで晴れて動画撮影が可能になった。と言うわけで、うんぬんかんぬん文字で書くより百聞は一見に如かず。どうぞ動画をご覧ください。
私が30歳だと発言したのでそれを受けて青い服の青年が左隣にいる観客の少年に向かって「30歳が即興したからには年下の人も即興で入って来い」という趣旨の発言をした。この青い服の青年が魅RIンというMCで新潟市亀田出身の18歳。観客の少年は今日初めて新潟サイファーを上越市から見に来たのだという。
充分な声量と明朗な発言内容、そして頭の回転数がハンパない。フリースタイルを始めてまだ7ヶ月ほどというから驚き。
定刻になったが主催者の一人、Yassy(ヤッシー)が来ない。みんなそれを気にしてラップの文句にもそのことが時たま入ってくる。Yassyは遅刻だ、遅いぞ、などなど。Yassyという人は一体どんな人物なのだろうか。Twitterを見る限りではテキ屋のような仕事をしているらしいが、おっかない人だったらどうしようかと内心不安になる。
なかなかYassyは来ない。そうこうしている内に誰かが「いつものように広場の真ん中でやろうぜ」と提案した。皆その提案に従って場所を移動。日の当たった広場のど真ん中に陣取ってサイファーを再開。
それにしても本当にみな上手い。正直新潟でサイファーといってもYouTubeに上がっているような本格的なものは期待できないだろうと思っていた。しかしそんな予想は完全に外れていた。驚くほどハイレベル。
ようやくYassyが遅れてやって来た。頭にバンダナを結ばずに被っている奇抜なスタイル。それを見てみんなが笑う。面白いヤツだYassy。途中参加でも速攻で即興ラップをカマす。
家業のテキ屋に誇りを持っている。決して「おっかない人」ではなかった。
中にはスケートボードを持って来ている人もいた。彼はSIGZ、17歳。中之口出身。
MCスタイルは冷静沈着で内に秘めたエネルギーを感じる。
広場の中央から見て駅側、エレベーターの下のところでアンプとマイクを設置した音楽バンドが演奏を始めた。おっとこれはラップの調子には全く合わない別ジャンルの音楽だ。
こっちの音源はiPhoneのスピーカー。向こうはアンプ。圧倒的に不利になった我々。
みんなの気持ちを代弁してマッシュMCの黒崎君がバンド演奏をラップでディスるもMC魅RIンがそれを諌めるようにして「音楽にジャンルは関係ない、あらゆる音源を耳に入れる」とラップで返答。
そして場所を移動することに。雨の日にいつも使っているという場所へ。ジュンク堂新潟店の出口を出て右方向に向かうと階段がある。階段を登って途中左に行くとちょっとしたコンコース広場のような空間が広がっている場所があるのをご存知だろうか。そこだ。そしてまたサイファーが始まった。
頭髪のことをいじられていた白いカーディガンのMCはDar-Tなたでここ。今日は魚沼市から電車で来た。16歳。彼は親切にも他のMCの名前や出身地などを教えてくれた。
ライブはするがフリースタイルは苦手なほうだと話す。
通行人のおばちゃんたちが「何をやっているのか」と話しかけて来た。ここでもやっぱり親切なMCなたでここがおばちゃんたちの相手をする。「サイファーをやって楽しんでます」と答えるとおばちゃんたちは納得したようにして帰って行った。
サイファーやり初めて早2時間半。午後4時をまわったところで黒いパーカーのMC Madness Killa M(中学生)がバトルMCをやりたいと言い出した。バトルをやるなら先ほどの広場でやろう、ということで再び場所を移動。
外の天候は若干曇りだしていた。バンド演奏は終わっていたのでもう安心だ。
まだ中学生なのに恐ろしくスキルが高い。
そして「MCバトル@新潟駅南口」が始まった!
予選① SIGZ vs Yassy
予選② Dar-Tなたでここ vs 黒崎海斗
予選③ 魅RIン vs Madness Killa M
敗者復活戦① 魅リRIン vs Dar-Tなたでここ
敗者復活戦② Yassy vs 魅RIン
準決勝① 黒崎海斗 vs Madness Killa M
目の前で展開される即興のMCバトル。カメラを持つ手が興奮で震えだす。アドレナリンが全身に放出されるような過激なディスの応酬。これこそが「シーン」だ。新鋭のカルチャーのヒップホップ・シーンだ。
そしてここは新潟。これほどまでに嬉しいことが他にあろうか。
準決勝② SIGZ vs 魅RIン
決勝 魅RIン vs Madness Killa M
優勝はMadness Killa M。これからが楽しみなMCだ。将来全国の舞台で新潟をレペゼンしてくれることを期待する!
さて新潟サイファー、いかがだっただろうか。
とてつもなく熱い「シーン」がそこにはあった。新潟にもこれだけのスキルとバイブスを持ったラッパーたちが存在している。その事実にとてつもない興奮を覚えた。皆さんも一度新潟駅南口に新潟サイファーを見に行ってみてはいかがだろう。きっと熱い何かを感じることができると思う。
サイファー見るためにわざわざ県外に行くことはありませんよ。
イベント情報
新潟サイファー
- 日時:毎週日曜日 13:30~(人数が集まらない場合は中止)
- 場所:新潟駅南口広場
- 雨天時:新潟駅南口通路内広場
ライター 北 三百輝(きた さんびゃっき)
※本記事の内容は取材・投稿時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報につきましては直接取材先へご確認ください。