この記事のライター 唐澤頼充(ライター/リサーチャー)
「狛犬を回して願掛けをする面白い神社が新潟にあるんだよ」と何人かから教えてもらい、興味があったのでいってきました。
新潟市中央区にある「湊稲荷神社(みなといなり)」です。新潟市歴史博物館みなとぴあの周辺なのですが、住宅街のような小道をすすんだところにあり、少し迷いながらもなんとかたどり着くことができました。
この湊稲荷神社は1716年に創立。江戸時代からある神社です。かつて新潟港に入る船は、この神社の森を目当てにしていたそうで、船乗り達の信仰を集めていたとのこと。
神社のすぐ外からも見えた狛犬。2つ鳥居をくぐると左右に2体(1対)。
「願掛け高麗犬」と書いてあり、新潟市民俗文化財の第一号とのこと。願掛けは女性は向かって左の狛犬を。男性は右の狛犬を回すそう。
口が閉じている女性用の狛犬。
自分の願意を心に念じながら狛犬を回して祈願すると、願いが叶うみたいです。
いざ!男性用へ。
思ったよりも重いです・・・。 カメラを構えながらなので、片手で必死に回す!
後から教えてもらったのですが、「回す人や、願事によって重さが変わる」という説もあるそう。ものすごい重かった気がしたのですが、願事のせいなのか、私のせいなのか・・・汗
よよよっとがんばって一周させてきました!
ところで、私なぜか時計と反対回しをしてました。「男性は右の高麗犬を」の文句を「男性は右回しで」と勘違いしたのは内緒です。「男性は右回しで」と勘違いしていたから、左の女性用のも右回しに回してしまったというのはもっと内緒です。
これも後からネットで見つけたのですが、「両手でゆっくり時計回りに回す。一周まわしたら高麗犬の頭に手をかざして願事を」なんて書いてあるものも。ぜんぜん違うやり方でやってしまった・・・
ただ、どれも確証はないはずですので、自分の思うがままにやってみましょう!きっと私も大丈夫!
ところでこの願掛け高麗犬が始まった由来が石碑に書いてありました。
要約すると、「新潟に来た船乗りは花柳街で遊ぶもの。相手をした遊女が名残惜しく、願掛け高麗犬を回して西の方角に頭を向け、海が荒れて出向できなくなるよう祈願するようになった」したというのが始まりだそう。
これを「荒天祈願」と言うそうですが、それって願掛けというより、呪いっぽい!呪いじゃん!と一人で笑ってしまいました。しかし、それが受け継がれてみんなが願事をするようになったのは面白いなぁ。
今現役の、回る狛犬は1995年に作られたもので、先代の狛犬は拝殿の中に保管されていました。
なんでも、嘉永7年(1854年)に奉納されたそう。いまから150年以上前!
さて、ここ湊稲荷神社はその名の通り「稲荷神社」です。
だったら狛犬が注目されるのっておかしい!と思う方もいらっしゃるのでは?稲荷神社といえばお狐様の方が有名ですものね。
安心してください。神社の入り口から三つ目の鳥居をくぐったところにちゃんとお狐様もいらっしゃいました。
にっこりと笑うお狐様って珍しいですよねって、あれ?
にっこりと柔らかな笑顔ですが・・・
ま、前足が縛られてますよ?えっ?微笑んでいる場合じゃないよ?
願い事を書いた紙を挟んだ麻紐でお狐様の前側の両足首を縛り、願いが成就したらハサミで切るというものだ、とか。または、足止めしたい相手によって右、左のおキツネさまの足に紐を結び、願うものだとか言われています。
きっと高麗犬を回す遊女の「荒天祈願」 から生まれた風習なんでしょうね。行かないで~って。
それにしても遠慮なしにぐるぐる巻き。
なんだか遊び心あふれる神社でこちらまで楽しくなってきます。
そんな、ちょっと面白い湊稲荷神社は別名「道楽稲荷」と呼ばれていました。
遊女達が願掛けに利用していたことが由来のようで、「下の新地の道楽稲荷おれも二三度だまされた」なんて歌があったそう。きっとこの道楽稲荷で、遊女と船乗りのムフフな駆け引きがあったのでしょう!船乗りが「ちくしょう、またお初に騙されたぜ!」と悔しがっている姿が想像できそうですよね~。
華やかだったと言われる古町花街を思い起こさせる場所だと感じました。
狛犬とお狐様。いろんな物語が起こったであろう湊稲荷神社は、現在も何ともユニークな神社です。全国的にも珍しいのでは?と思いますのでお近くに寄られた際は、ぜひ訪れてみてください。
ところで新潟は神社の数が日本一だそうです。だからこそ、こういった種類の神社が生まれてきたのかもしれませんね。
スポット情報
- 湊稲荷神社
- 住所:新潟市中央区稲荷町3482
ライター 唐澤頼充(ライター/リサーチャー)
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