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【インタビュー】十日町の限界集落に現れたシェアハウス、ギルドハウス十日町  そこで営まれる「新たな生き方・働き方」とは 【後編】

【インタビュー】十日町の限界集落に現れたシェアハウス、ギルドハウス十日町  そこで営まれる「新たな生き方・働き方」とは 【後編】

池トヒロクニこの記事のライター 池ト ヒロクニ(大学生)

 

十日町の限界集落に建てられたシェアハウス、ギルドハウス十日町
その設立者、西村治久さんへのインタビューの後編です。

前編ではギルドハウス十日町のもつ特長や、他のシェアハウスとは違うポイントに着目しましたが、後編では少し趣向を変えてみます。

「住み開きの古民家シェアハウス」とのコンセプトを持っていたり、わざわざアクセスの悪い中間山地の限界集落に立地するなど、従来のものとは一風変わったシェアハウス。そんな場をなぜ作ろうと思ったのか。

西村さんがギルドハウス十日町を設立した理由を掘り下げ、その背景にある独特の仕事観・社会観・人生観へとせまります。

 

「利己的かつ利他的」な発想がベース

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ーー 西村さんは十年ほど働いてた会社を辞めて以来、いろんな活動を盛んにやってきたと思います。たとえば、コワーキングスペースのプロデュースであったり、シェアハウスを作ったりであったりとか。そのことから私が思うのは、西村さんは人と人の偶然の出会いとか、個人の流動性を高めることをすごく重要視してるのかなあということです。どうでしょうか。

西村さん(以下略): あぁ。そうねえ。それは確かにそうなんですよね。なんでそういうのに関わってきたかっていうと、自分がフリーランスになった当初に人付き合いがどんどん減っていったことに疑問を感じて、それをなんとかしたい気持ちでコワーキングスペースに入ってみたら、そこで生まれるコラボレーションとか働き方がすごく楽しかった。

で、自分でもコワーキングスペースをプロデュースしたいと。で、そしたら新潟での自分の活動のフィールドが広がったと。だから人の流動性を広げると同時に自分の活動のフィールドを広げるためにやってるって感じかなあ。

ーー なるほど。

西村: フリーランスって中小企業から受託をうけてさ、下請けみたいな感じで仕事をするっていうのが一般的なスタイルなんだよね。だけど、むしろ自分で自分の活動の場を作って多方面の流動性を高めて、そこでスモールビジネスを生んだりするっていうスタイルがわりとフリーランスにもいいんじゃないかなと思って。

ーー そういう流動性とか活動の場を広げるっていう視点がこれからはより必要になってくると。

西村: そうだね。自分の拠点をいくつも作って、そこで何か企画・発信することは、自分の仕事にも役に立つし、自分の人生も豊かにできる。たぶん、十ある働き方の内の一つとして、今まで以上に広がっていくかなあとは思うよね。

あとは、その、コワーキングスペースって、本業を持つ会社員が空いた時間に自分のサードプレイスとして活用できる拠点にもなるように、ほかの働き方ともコラボできる場所にもなると思うんだよね。多くの人や情報のハブのような場所にもなると思うんで、そういう意味でコワーキングスペースとかに出向いて、自らの流動性を高めたり活動拠点を増やすっていうのは重要になってくるのかなあと思うんだよね。

ーー そうですね。ほうほう。そういうことの必要性・重要性を感じつつ、自身でもそのような場所づくりを促進したく、コワーキングスペースの立ち上げなどに積極的に関わってきた感じですかね。

西村: そうだね。それがイコール自分の活動の場を広げたり、自分のつながりを広げることにもつながるんで。

ーー 結局、自分にフィードバックがあるという。

西村: そうそうそう。自分に利益がありつつ、他人にも利益がある。利己利他の考え方ですね。まずは自分が楽しくないと、周りを幸せにすることもできないと思うので。

 

 地方と地方をつなげ、新風を吹かせる

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ーー ふんふん。なるほど。自分の幸せが活動の原点にある。そこから人の幸せに派生してく感じでしょうか。なるほどなあ・・・。最近の西村さんの活動として、まちかどギルドというものがあります。まちかどギルドはどのような想いで始めたものですか。

西村: あれはね、あの、コワーキングスペースとかシェアハウスとか作ってきたなかで、自分は日本全国を旅したんだけど、その旅先でのある意味集大成の一つなんだよね。

ーー ほーー。

西村: まったり庵もだけど、そのまちかどギルドも集大成の一つなんですよ。でそのまちかどギルドは、いろんな拠点が増えているなかでなにか拠点同士をつなげるプラットホームができないかって想いから始めたものなんだよね。コワーキングスペースとかシェアハウスって全国からいろんな人が集うし、その土地のキーパーソンも来る。であればその土地に何かの課題があった時に、その課題を解決するいい拠点になると思ったんですよ。そして自分がそういう場所をいろいろと旅した中で気づいたんですけど、だいたいどの地でも課題が共通するんだよね。

ーー そうなんですか。

西村: それこそ過疎化だったり、少子高齢化だったり、シャッター商店街だったり、どこも似たような問題がある。じゃあ別にその土地だけで取り組む必要ないじゃんと。みんな同じ課題を持っているんだったら、みんなで解決しようよと。そのコミュニティが生き続けられるかどうかって、常に新しい風が入るかどうかだと思うんだよね。

ーー ふんふん。そうですね。

西村: いつも同じ面々で活動してたら、アイディアも一辺倒のものしか出なくなるし、だんだん固定化してくる。でもそこにいろんな新しい風が入ることによって、新しいアイディアもできるし、新陳代謝もうまれるし。そうしたときに地方同士の動線、人の流動性をつくるってことが非常に有効だなって思って。たとえば旅人がふらっと来るような場所があるかとか、地元の人がどんどん外に出ていろんな所から人を引っ張って来るとか、地方のコミュニティ同士がいかにつながり合えるかっていうのが、そのコミュニティの良さを底上げする大きな決め手になるってことを旅先で感じたんだよね。

それで、そのようなことを実現できるプラットフォームを作ろうと。自分はwebプランナーなのでアプリを企画することでそれができないかなと。そんなきっかけで生まれたのが、まちかどキルド。

ーー そうなんですね。まちかどギルドは各地で共通する地方の問題を解決する手段の一つとしてあるっていう。

西村: そう。

 

 地方を盛り上げ、都会と相乗効果を

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ーー なるほど。西村さんはあの、地方に着目してるというか、地方の魅力に強い関心があるのかなあと思うんですけど、どうですか、地方っていうのは。

西村: うん。まあやはりこれからは地方が盛り上がるべきかなって思っていて。地方はいくつかのメリットを持っていて、その一つはコミュニティの広がりやすさだと思うんですよね。やっぱり誰かの友達は誰かの友達みたいなものもすごくあるし、役所との距離もすごく近いんで何かやろうと思ったら、ある程度行政も巻き込んで仕掛けることができる。そういうコミュニティの動きやすさっていうのは大きなメリット。あとは災害が起きたとき、いか迅速に臨機応変に対応できるかの決め手もコミュニティだと思うんでね。そういう強さがあるのはやはり地方なのかなあ。

ーー なるほどそうですねえ。柔軟性というかいろんな状況に対応できる力っていうのがコミュニティの強さなんですね。

西村: 日本の人口がどんどん減る中で、税収も減ってきて政府が地方に多くのお金を振り向けられない状況になってくるときに、やっぱり自治体に任せられるものがすごく増えてくると思うんだよね。そうなると地方のコミュニティっていうのはもっと元気にならなきゃいけない。

だからほんとに今というタイミングはものすごく重要で、このタイミングに作り替えるものを作り替えて、応援するべきものを応援しないと、どんどん地方は疲弊していくと。今こそ地方を盛り上げなきゃいかんタイミングなのかな。今の状況を乗り越えた地方だけがこの先も生き残る気がするんだよね。

ーー なるほど。西村さんが地方に注目しているワケがわかりました。

西村: だけどそれは別に東京を否定しているわけじゃなくて、東京でだって人間らしい生き方はできるし、ゆとりある働き方もできる。比較的に地方のほうがそういうのをやりやすいだけで。もちろん都会には地方にないメリットもたくさんあるしね。

ーー そうですね。地方と都会をつなげることによって、また新たなことも生まれるでしょうしね。

西村: そうそう。そこはもう、相乗効果を作るべき関係であって。

ーー なるほどなあ。今までは都会と地方の関係がアンバランスで、相乗効果がまったくないような社会でしたもんね。

西村: うん。そこはね、だんだんとフラットな関係になっていくのかなあ。

 これからの、生き方 働き方

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ーー なるほど。そのように地方と都会の力関係が見直されていくなかで、生き方や働き方も変わっていくんですかね。

西村: もう変わりつつあるだろうね。今でも気づいてる人は動き出しているし、自分のような働き方をする人ってこれからは当たり前になるかもしれんし。

ーー 自分のような、とは。

西村: 常に多拠点で動く人。家族を持ったりしたとき、それをやるのは難しいかもしれない。だけどたとえば週の半分はそういう働き方をして残りの半分は家族のために使うように働き方を考え直すと、家族と一緒に過ごす時間によって残り半分の仕事もまた豊かになるかもしれない。だから別に極端に切り替える必要はないんだよね。ワークライフバランスを考えて、新しい働き方と従来の働き方を一緒にやっていくやりかたもあるし。そういう自由があると思うんだよね。今の人、特に学生がすごくうらやましくて。

ーー なんでですか?

西村: 今ってシェアハウスとかゲストハウス, コワーキングスペースみたいな気軽に社会人と触れ合える場がものすごくあるんだよね。視野を広げる機会も多くて、昔と比べてすごくチャンスが広がってる。自分が大学生の頃って基本的に卒業してすぐに就職するのが当たり前で、そういうのに目を向ける必要もなかったし。

それからすれば今の学生ってすごくうらやましい。だからそういう場がせっかくあるわけだから積極的に顔を出して、チャンスをぜひその・・・ね。別に明確な目的がなくてもいいから、いろんなものに関わって、自分のやりたいこと見つけてほしいなって気がするね。

ーー うんうん。なるほど・・・。

西村: 大学生というか若い人を中心にどんどんそういうことを実践する人が増えてくれば、たぶん五年十年後の未来にそういう働き方を選んでいる人って、今よりも増えると思うんだよね。

ーー そうですね。

西村: ギルドハウスもそういう場になればいいなあと思ってやってますけどね。

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ーー なるほど。そのように新しい生き方や働き方を提案して、実際に動いている西村さんですけど、具体的に今までの働き方の問題点とはなんだと思いますか。

西村: ・・・そう、なんだろうね。一つはゆとりがないよね。それ以外の仕事に、それ以外のことに目を向けるゆとりが

ーー ふんふん。

西村: やっぱり利益追求型・利益至上主義だからそうなのか、会社で働く人たちは目の前の仕事以外に目を向ける余裕がなくなっているのかなって。どんどん自分の時間を奪われて、ほかのことを意識する・目を向ける余裕がなくなってくるのかな。たとえば、思い切って週の半分は休みにするとか、自由にいろんなコミュニティや場所に足を運んで、そこで学んできたことをその会社に活かすとかね。工夫できるものはたくさんあると思う。

なんかそういう新しいことをやらないと、オープンイノベーションは生まれないし、新しい社内ベンチャーも立ち上がらない。実際にそういうことに危機感のある会社はもう動いていて、社内の人間を積極的に外部の起業イベントに派遣していたり、地方の価値や魅力に気づいて地方進出していたりする。そういう新たな動きが徐々にきてるってことは、やっぱり今までの働き方に何らかの問題があるからだと思うんだよね。

ーー はい。それがゆとりのなさだとか、それに起因するアイディアの乏しさとかなんですかね。

西村: そうそうそう。そういうのが問題点の一つですね。まさに会社員だったころの自分がそうだったからね。仕事自体はとてもやりがいがあったんだけど今にして思えば、やっぱり視野が狭かったかなと。あの時もこういう働き方もあるって知っていたら、もっと楽しかったんじゃないかと。もっといろんな考え方ができたのかなあ・・・そういう気はするね。

 

ギルドハウス十日町は、変わり続ける

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ーー なるほど。ギルドハウス十日町はそのような従来社会に組み込まれた問題だとか地域の課題への解決の糸口となるような場になるのでしょうね。最後の質問ですが、西村さんはそんなギルドハウス十日町に、どのような将来像を抱いていますか。どのような未来が待っているのでしょう。

西村: 未来。単純に、ここに集まってくれる人たちが自発的に好きなことをやってくと思うんだよねそういう人たちの手によってこの家ってどんどん変わっていくと思うんだよね。だからこの家がどうなるのか自分でも予測不可能。でも基本ベースである住み開きの古民家シェアハウスっていうのはしばらく続いていくと思う。だけど時代の変化とか必ずあるはずだから、それには柔軟に対応していきたい。

古民家のよさってどんな状況にも柔軟に対応できることだと思うんだよね。古民家は時代を経るごとに味わい、ねんきが出てきて、それはいつの時代の人間も共通に持つ美意識だとか価値観をゆさぶる。で、さらにそれが自由に改装改築できるとなれば、どんな時代が来たとしても柔軟に変化に対応できると思うんだよね。だから別に危機感はない。もしこの先シェアハウスだとか住み開きとかコワーキングスペースという言葉が時代遅れになって廃れたとしても、それらが果たす役割の必要性自体は残り続けると思うんだよね。だからどんなことがあっても柔軟に対応できる、そういう場所であり続けるだろうね。

ーー なるほど。この場が変わり続けるのと同時に、周りの集落・地域にもいろいろな影響を及ぼしていくと思います。そうした結果、ギルドハウス十日町の周りは次第にどのようになっていくのでしょう。

西村: うん。確かに少なからず周りにも影響を及ぼしていくと思うんだけど、この集落に住んでいる方ってみんな70歳とか、80歳なんです。そうすると十年後、二十年後には亡くなってしまう可能性が高い。そうなったときにもし可能であればね、ここ一軒だけではいっぱいいっぱいになって、あふれ出てしまった人がそこに住んだりとかってかたちで家を活用させてもらって、ある意味この集落がギルドタウンみたいになっていく。もともと住んでいた方々の想いとか意思、歴史とか文化を継承しつつ、津池という集落も残りつつ新しい場所に変わっていくというかな。そういう風になっていくといいよねぇ。そうすれば素敵な家も残るわけだし、日本の知恵っていうのも残っていくし。ね、だからなんかそういう風になっていけたら・・・。

ーー いやぁ。最高ですね。


≪終わります≫

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池トヒロクニこの記事のライター 池ト ヒロクニ(大学生)

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