大晦日はカニか?サケか?(その2)サケはご馳走ではなくなった?

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毎年、大晦日のご馳走のあとにカニを食べるのが習慣の雪野家。しかし、もともとこの越後の大晦日には、新しい年を迎え祝う「年取り魚」として、ある魚を食べる風習がありました。その魚とは・・・

前編:大晦日はカニか?鮭か?(その1)雪野家カニでお年取り

写真 12

ばーん!鮭です。ちなみにこの鮭は「塩引鮭」。(北海道だと「新巻鮭」ですから、これは新潟県産なのかな。自家製なので、そこの大河津分水でとれた鮭なのかな?)

写真 13(こっちは「山漬け」、となっているから、北海道産かな?)

とにかく、鮭を年取り魚として、どこの家庭でもめでたくたべていたそうです。

うーん、うちはどうだったんだろう。うちの両親は弥彦村と中之口村(現新潟市)出身で、どっちも西蒲原の人間。その50代である親に聞いてみたところ、昔はやっぱり、大晦日には一匹もんの鮭をたべていたそう。むしろカニは高級品で手に入らなかったそうで。冷蔵技術もなかったし。

それがいつのころか年取りのご馳走は、新潟県産の鮭から(おもに北海道産の)カニへ。というのも、鮭がご馳走ではなくかったから、というのもあるらしいのです。

いえ、もちろん今でも大晦日には鮭はおいしく頂きます。でも北欧のトラウトサーモンで、しかも切り身です。

写真 14

2013年大晦日の雪野家の食卓より

鮭がごちそうではなくなった?

少し気になります。北国越後は大河信濃川の流れるところ。それはそれは鮭がとれたはず。しかし、その大河ゆえ河川改修や、豊富な水量を利用した首都圏向け発電所設置の影響で、鮭がとれなくなり、とくに長野県にはあがらなくなりました。

そのせいでしょうか?いやそれは親が生まれた頃にはもう悪化していたはず。。。*1

そしたらどうも親の話によると、日本では養殖がさかんになったり、冷蔵技術などが進んで輸入量が増えたりして、いつでも食べられるようになったから、ご馳走感がなくなったんでは、との考察が。

うーん、そうなのかもしれない。去年は日本食が世界遺産に登録されたのでいろんな特番がありましたけど、ユネスコが認めた4つの理由のうち、「年中行事との密接な関わり」。

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NHK ONLINE おはよう日本 特集まるごと よりhttp://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2013/10/1028.html

身近な川であがった鮭を年越しの行事として食べていたことと関係があるのかも。

調べてみると、新潟でサケが「めでたい・ありがたい・信仰の魚」として、長岡の「王神祭がでてきました。

王神祭は(中略)その要となるのが又倉行事と年魚行事です。年魚行事とは、最高の神饌とされる信濃川を上ってきた雌のサケを、長い箸と包丁で切り分け、鳥居の形に並べる行事です。神に供えられるサケには一切手を触れずに執り行われます。緊張感漂う伝統の神事は、サケを媒介として王神に信濃川の治水と豊穣を祈った遠い昔を想像させます。http://www.hrr.mlit.go.jp/shinano/shinanogawa_info/qamini/matsuri/matsuri3.html

サケはただの身近な魚というだけでなく、越後の国の生活に深く根付き、神事や文化とのつながり深い生き物なんですね。

また、NPO法人 新潟水辺の会では、発電所や行政や学校、子供たちなどと連携し、信濃川・千曲川(長野県での呼び名)に鮭の遡上を取り戻す取り組みをしていて、効果をあげています。水と土の芸術祭でも「海から川へ鮭と船が運んだもの ―― 信濃川遡上2012 ――」が番外シンポジウムとして取り上げられていました。

この活動が続けば、家庭に身近な川の鮭が戻ってくる、そんな日がいつか来るかもしれません!その日に思いを馳せる年の瀬でした。

とは言えこれはうちの家庭の歴史です。みなさんの地区やおうちでは違った食べられ方をしているかもしれません。しかし最大のご馳走が鮭からカニに変わってしまった、というところは多いのではないでしょうか?どうでしょうか。村上エリアでは鮭・鮭が登る川をとても大切にし誇りにしていますから、鮭は堂々と大晦日の食卓に並んでいるのかな?

お年取りに魚を食べるのは、越後に限ったことではなく、全国のことです。東日本では鮭、西日本ではブリが多い、という違いはあるようです。*2そうすると、おとなり北陸はカニの名産地ですからどういう情勢なのでしょうか。うちもそうだよ、いやうちはこうだ!みたいな意見がありましたら、ぜひ教えてください。

とにもかくにも、今年もおいしいエビ、カキ、アサリ、ウニ、サケ、カニの水の幸で年を越すことができました!ごちそうさま!

おまけ

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東京芸術大学美術館収蔵品データベースhttp://db.am.geidai.ac.jp/object.cgi?id=4126

鮭と言ったらこの絵(新巻鮭)。*3

高橋由一「鮭」。つるされ、一部身を削がれた鮭は哀愁をさそうけど、赤い身がなんともまたおいしそう。

 

リファレンス(インターネットで取得できるもの) 

*1 信濃川の鮭の遡上量

   国交省 信濃川河川事務所 信濃川中流域水環境改善検討協議会   H20第16回会議 資料

  http://www.hrr.mlit.go.jp/shinano/shinanogawa_info/mizukan/pdf/16-1-71.pdf

*2 年取り魚

   マルイチ産商HP http://www.maruichi.com/fish/kotsu/48.html

*3 高橋由一 「鮭」 にまつわる話

  荒俣宏の「超博物誌」 http://www.food.maruha-nichiro.co.jp/salmon/culture/02.html

  このサイトは「サーモンミュージアム」です。サケにかんすることてんこもり笑

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ライター 雪野 瑞谷

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※本記事の内容は取材・投稿時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報につきましては直接取材先へご確認ください。