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ボードゲームで新潟を世界へと発信する。 「戦国ラタック」創始者にお話を伺う(前編)

ボードゲームで新潟を世界へと発信する。 「戦国ラタック」創始者にお話を伺う(前編)

takeyaprof_bustupこの記事のライター 竹谷純平(フリーライター)

新潟に「戦国ラタック」というボードゲームがあるのをご存知でしょうか。数年前に産声をあげたこのゲーム。徐々に競技人口を増やし、「上杉謙信公杯」という大会が開かれるまでになっています。「ラタック(L’ATTAQUE)」はナポレオン時代のフランスで生まれ、軍人将棋のベースにもなったといわれるゲーム。ルールは実に簡単で、駒を裏返したまま敵陣へと動かし、ぶつかったところで表に返し勝敗表を見ながら勝負を決めます。最終的に敵の軍旗をとった方が勝ちというルール。ルールを覚えるのにかかる時間は、なんと約10分(!)という驚きのわかりやすさながら、奥が深く、戦略性の高いゲームです。

本国フランスでは、近代以降、娯楽が充実してきたなどの要因から人気は衰退。いまでは、ほとんどのフランス人が知らないと答えるような状況になっています。 そんな中、そのラタックを日本に持ち込み、「戦国時代」「上杉謙信」という日本、さらには新潟ならではのテイストを加え、蘇らせようとしている方がいます。戦国ラタックの創始者である有磯昌男さん。単純明快なルールのボードゲームに隠された、創始者さんの熱い思いから哲学までを余すところなく伺います。今回は、「チェス教室」をはじめとしたボードゲーム・イベントを定期的に開催するカフェ、「Blue Café」さん(新潟市中央区)でお話を伺ってきました。

誰でも覚えられる。すぐに参加できる。「ラタック」の魅力

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「戦国ラタック」創始者の有磯昌男さん。新潟チェス倶楽部の副会長も務めるなど、ボードゲームへの造詣は深い。

戦国時代を題材に、何かの催しを企画できないかと考えていた有磯さん。Jリーグ・アルビレックス新潟とヴァンフォーレ甲府の対戦、通称「川中島ダービー」を観戦しているとき、ふと、このように思い立ったとのこと。「川中島の戦いに想いを馳せながらサッカーを観て楽しんではいたのですが、ふと『ただ傍観しているだけではつまらない』と感じたんです。そこで、自分が大将の気分になって川中島の戦いを楽しむには、ボードゲームを作ったら面白いのではないかと思いつきました。上杉謙信と武田信玄を大将としたボードゲームを。将棋などの既存のゲームではなく、新しいゲームでやりたいということで探し回ったところ、ラタックに行き当たりました」と有磯さん。当初は、自身も愛好するチェスや将棋と絡めたイベントを企画してみたものの、白紙に。「チェスや将棋は、大変面白いけれど、ルールは複雑。『ゲームで発信をしていく』となると、ある程度の分かりやすさ、参加のしやすさが求められると考えました。その意味では、ラタックはルールが非常に明快。ラタックがいいんじゃないかと考えました。」

しかし、ラタックの知名度は想像以上に低かったと言います。「新潟でフランス語の講師をしている方など、フランス出身の方に聞いて回ったのですが、誰も知らない。あらゆるボードゲームに詳しいジャック・ピノーさん(※)にも聞きましたが、全く知らないという(笑)。あまりの知名度の低さにびっくりはしました。」

※ジャック・ピノー…ジャック・マリー・ピノー(Jaques Marie Pineau)。朝霞チェスクラブ名誉会長。全日本チャンピオンに輝いた実績を持ち、チェスオリンピック日本代表(1988年)。チェスに関する多くの著作を執筆し、将棋棋士の羽生善治・森内俊之両氏を指導したことでも知られる。

さらに有磯さんは続けます。「同様のルール内容の『ストラテゴ」というオランダ発祥のゲームがあります。ラタックよりも新しく、50年ほどの歴史の新しいゲームです。アメリカなどではポピュラーですが、こちらもフランス人は全く知らない。本当に誰も知らないようなゲームなんですよね。けれども、誰でも覚えられ、参加しやすいのは魅力。これでいこうと思いました」

本国フランスですら誰も知らないようなゲーム。お話を聞いていくうちに「ただわかりやすいから」選んだのではなく、有磯さんならではの「戦略」で選んだことが見えてきました。

「歴史」をまちおこしの起爆剤に

日本史上に名高い「川中島の戦い」がモチーフ。史実では引き分けが続いたが…

日本史上に名高い「川中島の戦い」がモチーフ。戦国ラタックでは、上杉軍15枚と武田軍15枚が盤上で激突する。史実では引き分けが続いたが、ゲームでは果たして…?

有磯さんは、戦国ラタックを作るにあたり、大きく分けて3つの戦略を設定しました。まず1つめは「まちおこし」の起爆剤にしたいということ。「戦国時代は、国内外で関心の高い時代。例えば中国などでは『徳川家康』の時代小説が大流行しています。国内では、昔から戦国時代にまつわる祭も多く開催されています。うまく組み合わせられれば、まちおこしのきっかけになると考えたのです。」

「戦国イベント」を実際にまちおこしにつなげている例が全国にはいくつもあります。例えば山梨県で開催されている「武田信玄公祭」は、開催3日間で延べ100万人もの参加者を動員。様々な要素をミックスしているお祭りが、多くの動員を実現しているのだと有磯さんは分析します。信玄公祭には戦国武将行列、模擬合戦といった催し以外にも、文化講演会やお茶会など、総合的に楽しませる内容が多く含まれるのだとか。「新潟にも『謙信公祭』など戦国時代を題材とした祭りがありますよね。GACKTさんが謙信公の役を務めたりと、楽しめる内容になっている。けれども、文化交流的な要素はまだまだ少ないのかな、と感じています。戦国時代に触れる、楽しむにもいろんな楽しみ方があるということを提案するためにも、今後はお祭りと協力し、総合的に楽しめるコンテンツにしていければ、と考えています」と有磯さん。今後は、謙信公祭をはじめとした戦国イベントとのコラボレーションの可能性を探っていくとのこと。

地域を訪れる多くのお客さんに楽しんでもらい、「来年もまた来たい」とリピーターになってもらう。そのためには、総合的コンテンツとして戦国時代の雰囲気を楽しめる内容にする。ただ単純にボードゲームを作るだけでなく、ゲームを通じた文化交流の機会を生み出し、まちおこしに寄与したいという、有磯さんの強い思いを感じます。そのためには、多くの方の参加が必要不可欠。だからこそ、単純、明快かつ誰でも参加できるラタックが最高のツールになると考えたのです。

「また、最近は外国人観光客がとても増えていますよね。その方たちが何処を訪れるかというと、飛騨高山などの、言わば『日本人の原風景』『日本の心』を感じられるところらしいんですね。どんどん、東京や京都ではなく地方へ目が向いている。そうしたら、次は必然的に歴史に目が向くのではないかと考えたんですね。そこで、『へえ、新潟には上杉謙信という武将がいたのか。面白い!』と思うかもしれない。そこからラタックにも興味をもってくれれば、国際交流のきっかけにもなるかもしれないと思っています」と有磯さん。歴史とラタックをつなげ、文化交流の可能性も探る…。ボードゲームを通じ、まちおこしと国際交流の可能性を探ります。

(後編へ続く)

イベント情報

ラタック大会

6月14日に開催される「第二回ふるさと村上杉謙信公杯 戦国ラタックボードゲーム大会」。

すでに単独でもイベントを開催。2015年に行われるイベントとしては「上杉謙信公杯」大会が6月14日、新潟ふるさと村にて行われます。


takeyaprof_bustupこの記事のライター 竹谷純平(フリーライター)

 

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